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懲役3年 5

[444]  デフレーター  2010-07-22投稿
「お待たせいたしました。夕食でございます。」
差し出された盆の上には茶碗一杯の麦飯と、コンソメらしきスープだけが乗っていた。
「…これだけか?」
「今日はまだ掃除をしておりませんからね。働かざるもの食うべからず。生きるために最低限の食事をご用意いたしました。」
「ふざけんなよ…たったこれっぽっちじゃすぐ腹減っちまうよ…」
俺は高嶋を睨みつけた。
「要らないとおっしゃるならお下げいたしますよ。」
「…分かったよ…」
俺は仕方なく用意された食事を食べはじめた。
「食べ終わりましたら房の隅に置いておいてください。それでは…」
高嶋は深々と一礼して立ち去った。
「…」
夕食は全く味気なかった。
いくら刑務所とはいえ、酷い扱いだ。
それでも我慢して食べるしかない。
たった3年の辛抱だ…たった3年の…

どうにか食事を終えてベッドに寝転がっていると、高嶋を先頭に大勢の人々が列をなして入ってきた。
人々は鉄格子の前でサッと列から離れ、その前に立った。
高嶋は全員が鉄格子の前に立ったのを確認すると、言った。
「今日も1日お疲れ様でした。あなたの心は今日もまた、わずかではありますが浄化されました。」
「ありがとうございます。」
囚人とおぼしき人々は声を揃えた。
「明日もまた、己の心と向き合い、そして浄化しましょう。おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
少しも乱れない囚人達の息のあった挨拶。
俺は不気味に思った。
まるで怪しい宗教みたいだ。
高嶋が歩き去ると、囚人達は鉄格子を開けて中へ入り、鍵をかけた。
そしていそいそとベッドの用意をすると、皆一斉に眠りについた。
囚人達に話しを聞いてみたい気持ちもあったが、
この怪しげな集団に関わると良くないことが起こるのではないかという不安の方が大きかった。
…とは言っても今の俺はこいつらと同じ立場なのだが。

ふと見回すと、一人だけ寝ていない囚人がいた。
40代くらいの男性だ。
天井を見つめながら、どこか清々しい微笑みを浮かべていた。
「なんだあいつ…一人でニヤニヤして…気持ち悪いな」
やはりこいつらと関わるのはよそう。
そう思って俺は眠りについた。


続く

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