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懲役3年 7

[432]  デフレーター  2010-07-22投稿
食堂には長いテーブルがいくつか並び、木の椅子が用意されていた。
高嶋に促され、俺は少し高くなっている所に上った。
「皆さん、昨日からここで刑期を過ごすこととなった池田真哉さんです。罪状は傷害です。」
そんなことまで言うだろうか。俺は不快な気分になったが、とりあえず挨拶することにした。
「よろしくお願いします…」
囚人達は拍手してくれた。
「一緒に頑張りましょう!」
そんな声も聞こえた。
不思議と嫌な気はしなかった。
「では、池田さん。空いている椅子におかけください。」
案内されたのは食堂の隅っこの椅子。
俺と同い年くらいの囚人が固まっている場所だ。
椅子に座る。
囚人達は皆一言も話さない。
気まずい沈黙が流れる中、朝食が配膳される。
クロワッサンが二つに、コーンスープ、海藻のサラダ。
昨夜の質素な食事から考えれば遥かに豪華だ。
全員に行き渡ると、高嶋が壇上に立った。
「朝食は、一日の労働の原動力。感謝しながら食べましょう。いただきます。」
「いただきます。」
囚人達は両手を合わせ、食べはじめた。
食事の最中も、言葉を発する囚人はいない。
よっぽど無口な人ばっかりなのか、私語禁止なのか…
俺も黙ってクロワッサンを手にとり、食べはじめた。
美味い。
いや、普通のクロワッサンなのだろうが、昨夜の食事を経験しているだけに、とても美味く感じた。
俺は夢中で食事をすすめ、あっという間に平らげた。

全員が食べ終わった頃、池田がまた壇上に立った。
「朝食の時間は以上です。皆直ちに割り当てられた場所に向かい、掃除をしてください。ごちそうさまでした。」
「ごちそうさまでした。」
囚人達は立ち上がり、食器を持って前に移動し、食器を下げて食堂を出た。
俺は食器を高嶋に手渡した。
「池田さん。担当の場所にご案内致します。ついて来てください。」

廊下を抜け、いくつかある扉のひとつを高嶋が開けた。
20畳くらいはあろうかという広大な部屋だ。
所々に豪華な家具や置物がある。
中ではすでに2人の囚人がモップを持って掃除をしていた。
「ここが今日の高嶋さんの担当場所です。」
高嶋はにっこり笑ってそう言った。


続く

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