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懲役3年 9

[435]  デフレーター  2010-07-23投稿
棚一つ磨くくらいでこんなにも晴れやかな気分になれるのか
俺は忘れかけていた小さな幸せをも見出だした気がした。

俺は続けて他の棚やタンス、壺も磨きあげた。
自分の心と向き合いながら、自分の心の汚れを取るように…
磨き上げるたびに、綺麗になるたびに、俺の中に蓄積された汚れも、洗われていくような気がした。
…と
パチパチパチ
他の2人が拍手してくれていた。
俺は照れ笑いを浮かべた。
「本当に綺麗に磨きあげますね。」
「床よりも綺麗なくらいですよ。」
「いえ…まだまだですよ。」
その時、高嶋が部屋に来た。
「お疲れ様でした。お昼の時間です。」
「行きましょうか、池田さん。」
「はい。」
俺は2人と一緒に高嶋の後について歩いた。

昼食は朝食とはうってかわって自由な雰囲気だった。
バイキング形式で、誰と食べるのも自由。私語も自由だった。
俺は一緒に部屋を掃除した2人とテーブルを囲んだ。
「慣れましたか?」
「いえ、まだ…戸惑いはあります。」
「無理もないですよ。今日から本格的に刑期が始まったのですから。」
2人の名前はそれぞれ川上英樹、佐々木幸弘。
川上は長身で短髪。佐々木は体格が良く、眼鏡をかけていた。
「池田さんは、傷害罪…でしたよね。」
川上が尋ねる。
「はい…友達が金を貸してくれなかったってだけでついカッとなって…」
「なるほど…」
「反省、してますか?」
「もちろんです。…もう2度と、犯罪は犯しません。」
「その気持ちがあれば大丈夫です。」
佐々木はにっこり微笑んだ。
「この刑務所には、凶悪な犯罪を犯した人ばかりが収容されているんですよ。」
俺は周りを見回した。皆にこやかに談笑している。
「そうは見えませんけど…」
「皆、ここで刑期を過ごす過程で、更正していったんです。」
「掃除を続けて…更正を?」
「ええ。皆、始めはここのルールに抵抗し、脱獄を試みる者までいました。ですが…自分の手で部屋を…家具を綺麗にしていく中で…達成感を、喜びを覚える。自分の心が綺麗になる感覚を覚える。
更正とは、そういう事なのですよ。」

俺がさっき感じた感覚と同じだな…
俺は川上の話しを頷きながら聞いた。


続く

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