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欲望という名のゲーム?72

[440]  矢口 沙緒  2010-07-24投稿



「どうなさいました、孝子様?」
「やだ、左のコンタクトを落としちゃった」
「コンタクトを…
それはいけませんね。
さっそく探しましょう」
そう言って動こうとする鹿島を、孝子が手で制した。
「あっ!
動かないで!
踏んじゃったら、替えがないから。
大丈夫よ。
私のすぐ下に落ちていると思うから」
孝子はその場に両膝を着いて、手で床を撫で始めた。
鹿島はその様子をしばらく見ていたが、どうする事も出来ないのを悟って、自分の作業に戻った。
「あったわ!
あー、よかった。
眼鏡を持ってきてないから、これがなくなると困るのよね。
ちょっと部屋に戻って、コンタクトを洗浄してくるわね。
手伝うのは、そのあとね」
孝子は二階にあがり、そしてすぐ戻ってきた。
「よし、コンタクトOK!
準備出来ました!
で、何から手伝おうか?」
それが鎧の姿に戻るまで、たっぷりと二時間はかかった。
鹿島が残った部品はないかと点検する。
「いよいよ完成ね」
「はい。
あとはうまく立てばよいのですが…」
二人がかりで鎧を立たせる。
そして、二人同時に手を放した。
「出来た!
孝子様、本当に助かりました。
私一人では、どうしようかと…」
鹿島の言葉が終わらないうちに、鎧がグラッと傾いた。
二人はあわてて、それを押さえる。
「どこか変みたいね」
「そのようですね」
結局それから一時間余りも、二人はジャンヌ・ダルクと格闘するハメになった。


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