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懲役3年 11

[434]  デフレーター  2010-07-24投稿
「さあ、午後も頑張りましょう。」
「あ…はい。」
俺達は食器を片付けて部屋に戻り、掃除を再開した。

掃除しながら俺は考えていた。
たった3年の刑期で、全ての囚人が更正されるのだろうか。
無期懲役で出所してもまた犯罪に手を染める人もたくさんいるのに…
しかもこの刑務所に入っている囚人が全員懲役3年。
3年という期間に何か意味があるのだろうか…
「池田さん。」
川上が声をかけた。
「拭き方が雑になっていますよ。」
「あ…すみません…」
「雑念は、心を磨く妨げになります。綺麗にすることだけを心掛けてください。」
「はい…」
俺は改めて掃除に集中した。

「よし…」
全ての家具や置物を磨き終え、手を止める。
「素晴らしい。全部ピカピカですよ。」
「入所初日とは思えないですね。」
川上と佐々木が綺麗になった棚などを見て褒めてくれる。
「ありがとうございます。」
「ご苦労様でした。本日はここまでです。」
高嶋が部屋に入ってきて、部屋の様子を見て目を丸くする。
「素晴らしい…他のどの部屋よりも綺麗です。池田さん、もはや心の浄化を実感出来たのではないですか?」
「は…はあ…」
今までこんなに褒められた経験がなかったので、少し困った。
「しかしながら…一度過ちを犯した心は、容易に浄化できるものではありません。どうしても、相応の時間がかかってしまうでしょう。」
「だから…3年、なんですか?」
「刑期に関しては、今は気になさらないでください。」
高嶋は俺の目を見て言った。
「ともかく今日はお疲れ様でした。ゆっくりお休みください。」

1日働いた後の夕食はとても美味く感じた。
ここは刑務所の割に設備が充実している。
大浴場でゆっくり疲れを取り、独房へ向かう囚人の列に加わる。
この過程だけはどうしても慣れなかった。
どんなに掃除を頑張ろうとも
自分が囚人であることを改めて思い知らされている気がした。
見えてきた。薄暗く、重い空気が立ち込める囚人達の牢獄。
「今日も一日お疲れ様でした。」
「お疲れ様でした。」
少しタイミングがずれたが、誰も気にしていないようだった。
「明日もしっかり、己の心を磨きましょう。おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
こうして、刑期の初日が終わった。


続く

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