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懲役3年 13

[424]  デフレーター  2010-07-24投稿
掃除という取るに足らない行為でも
磨かれて綺麗になった部屋を見る度に感じる清々しい気持ち
そして、一つの役割を終えて新たな役割を任せられる達成感。
ここで過ごす中で、俺は忘れていた小さな幸せを見つけた気がしていた。

ほこり取りが終わったら、今度は床磨き。
「床はあなたの人生の土台。未来へ羽ばたいていくための土台は、やはり綺麗に磨かなければいけません。」
高嶋の言葉を胸に刻みながら、俺は床を磨いた。

川上や佐々木とは、しょっちゅう一緒に食卓を囲み、様々な話しをした。
掃除をする上で心掛けるべきこと。俺が入る前にいた様々な囚人の話。
初めて一緒に掃除をした仲の俺達は、誰よりも強い絆で結ばれている気がした。

そして、川上と佐々木が出所する前夜。
俺達は大浴場にいた。
「こうして佐々木さんや池田さんと一緒に風呂に入るのも、今日が最後ですね…」
川上は感慨深くつぶやいた。
「そうですね…あれから3年…池田さんが入ってから2年。年月の経つのは早いものです。」
佐々木も頷く。
「本当にお世話になってばかりで…何とお礼を言っていいのか…」
「いえいえ。…池田さんは、本当に優秀な囚人でした。たった1日でここのルールに順応し、立派に更正への道を歩んでいるのですから。」
「普通は、慣れるまでに少なくとも1週間はかかるものです。私達もそうでした。」
「光栄です。」
俺は微笑んだ。
ここに来てから、彼らのような立派な仲間に出会えた。これも俺の財産だ。
「お二人は…出所後はどうなさるんですか?」
「私は…まず被害者遺族の方々に謝罪し…2度と同じような犠牲者を出さないために、活動しようと思います。」
ひき逃げでこの刑務所に来た川上が言った。
「私も…川上さんと同じく被害者への謝罪が最優先すべき事項です…その後のことは、ゆっくり考えたいです。」
婦女暴行を犯した佐々木が言った。
「明日からは…別々の道を歩むんですね…でも、ここでの経験は、大きな糧になったのではないですか?」
俺が尋ねると、川上が答えた。
「ええ。ですが…本当にここでの経験が活かされるかどうかは、出所した後に分かるらしいのです。」


続く

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