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欲望という名のゲーム?74

[412]  矢口 沙緒  2010-07-24投稿



雅則はテーブルの下にかがみ込み、よいしょと掛け声をかけ、何かをテーブルの上に持ち上げた。
それは、あちこちのドアに下げられている、例の黒い金属製の雅則の笑顔だった。
「この屋敷のいたる所に、これが下げられているのを、すでに諸君達は見て知っていると思う。
どうかね。
なかなかよく出来ているだろう」
雅則はそう言って、それを自分の顔と並べて見せた。
「これにも名前を付けるとしようか。
…そうだな、笑っているから、スマイル君というのはどうかな?」
「悪趣味君とでも、付けやがれ」
明彦が言う。
「このスマイル君が、諸君達を正しい入り口へと案内してくれるはずだ。
ただしね、このスマイル君自体には、何の仕掛けもないよ。
中は空洞だが、この中には何も入ってはいないよ」
そう言って、手でコツコツと叩いてみせた。
「こいつはただの空っぽだよ。
今の私と同じさ」
雅則はそれをテーブルの上に寝かせた。
「それと、もうひとつヒントを出そう。
やはり、迷路の入り口に関するヒントだ。
諸君達に集まってもらった、最初の夜のテープだがね。
すでに鹿島君が人数分をダビングして、それぞれの手に渡っていると思うが、あのテープをもう一度よく検討してくれたまえ。
スマイル君とあのテープがあれば、もう諸君達は迷う事はないはずだ。
終盤戦の三日を、どうか有効に使って欲しいものだ。
では諸君!
また明日の夜、会うことにしよう。
おやすみ」
画面が消え、鹿島がテープを引き出した。
「このテープもダビングしまして、私の部屋に置いておきます。
いつでも取りにいらしてください」
鹿島が食堂を出た。
それが合図のように、全員が解散した。
喜久雄と友子は屋敷中にある、雅則の言うところのスマイル君を見て回り始めた。
明彦は自室に戻り、最初の夜のテープを再生する事にしたらしい。
孝子はいつも通り、図書室に直行した。
一人食堂に残った深雪は、ポケットから屋敷の見取り図を取り出し、それを広げた。
やっぱり無関係ではなかった。
その見取り図には、いたる所にX印がついている。
スマイル君のある場所だ。
これに関しては、彼女は他の者より一歩リードしていることになる。
しかし、その意味が分からなければ、何の価値もない。


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