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欲望という名のゲーム?79

[436]  矢口 沙緒  2010-07-25投稿



まず深雪は三階から見た。
この階の七つの部屋は、全て行き止まりだ。
これに早く気がついていれば、あのジャンヌ・ダルクの鎧を分解する必要はなかった。
二階は当然除外という事になる。
では、答は一階か?
いや、一階の各部屋にも、あのスマイル君はあった。
そして、外もダメ。
では、いったいどこか?
残った場所が一つあった。
地下室へのドアだ。
あのワインの貯蔵庫に続く地下室へのドアだ。
深雪はそっと部屋のドアを開け、廊下の様子を伺った。
幸い誰もいない。
喜久雄の姿が見えないという事は、自室で友子となんらかの相談をしているか、あるいは三階にでも上がっているのだろう。
彼女は忍び足でホールまで降りた。
今は誰にも見付かりたくはなかった。
ホールもまた無人であった。
彼女は地下室へのドアを開け、滑り込んだ。
そして、すぐにドアの裏を確認する。
ない!
ここにだけは、あの笑顔がない。
笑顔のないドアとは対照的に、今度は彼女が勝ち誇った笑顔を浮かべた。
下に向かうに従って、ブーンと空調のような音がする。
ワインを一定の温度と湿度に保つための装置だ。
やがて彼女は膨大なワインの前に立った。
その量は呆れ返るほどあった。
深雪はその気が遠くなるようなワインの中を歩き回った。
すでにその顔から笑顔は消えていた。
この中から、いったい何を探せばいいのか?
だが、それは意外と早く見付かった。
ある棚の前まで来た時、彼女は思わず声を上げそうになった。
その棚の一番下の段に並んでいる全てのワインのラベルに、なんと猫の絵が描いてあるのだ。
ついに『猫』を発見した!
これが最初のキーワードだ。
すぐに一本を取り上げた。
ラベルに描かれた猫の絵以外の文字は、まったく読めない。
裏を見ると、日本語で書かれた簡単な品質表示のシールが付いていた。
ワインの名前は
『シュバァルツェ・カッツェ』
ドイツのツェラーという村の産となっている。
透き通った薄い緑色のボトルで、中は透明な白ワインのようだ。
一目見ただけで、その中に特別な物が入っていないのは、すぐに分かった。
次のボトルを取ってみた。
ラベルと猫の絵柄は少し違うが、やはり『シュバァルツェ・カッツェ』という名のワインだった。
これも中に特別な物は入っていない。

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