夢十夜 〜第八夜〜
こんな夢を見た。
浅い眠りから醒めると、私はバスに乗っていた。
乗客は私だけだ。
バスは桜並木の中のバス停に止まったまま動かないでいる。
私はぼんやりと外を眺めた。
桜の花弁がひらひらと舞い散る中、桜並木に沿って流れる疎水の水面に日の光が反射してきらきらと輝いている。
夢のようだと私は思った。
気がつくと私の座っている席の窓の外に、誰かが立っていた。
私の初恋の人だった。
当時と変わらぬ姿でそこにいる。
その人は私に向かって何かを伝えようとしていた。
しかし、薄い窓ガラス一枚に遮られているだけなのに、何を話しているのか私には全くわからない。
そのうちバスはゆっくりと動き始めた。
私の初恋の君はバスを追いかけながらなおも私に何かを伝えようと唇を動かしていた。
私もそれを理解しようと必死だった。
しかしバスはどんどん速度を上げ、とうとうその人は見えなくなってしまった。
桜並木は永遠かと思えるほど何処までも何処までも続いている。
もう少しだけ眠ろう、と私は思った。
そこで目が覚めた。
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