欲望という名のゲーム?91
四月二十日\r
この日は珍しく、ランチに全員が顔を揃えた。
先に済んだ喜久雄と友子が食堂を出た。
それに続いて、孝子が席を立つ。
そして、食堂を出ようとした時、明彦に呼び止められた。
「おい、孝子。
喜久雄と友子と三人で、今朝からビリヤードの部屋にいるが、何してるんだ?」
「遊んでるの。
ビリヤードで」
「遊んでる?
あの二人は宝探しをやめたのか?」
「うん。
もう、どうでもいいんですって。
それで朝からあの部屋で遊んでるの。
私もこれから行くところ。
三人共ビリヤードの正式なやり方は知らないけど、でもけっこう面白いよ。
兄さんも来る?」
「ふん。
金の欲しくない奴は、勝手に遊んでろ。
俺は諦めたりしないぞ」
明彦は椅子を蹴るようにして席を立った。
深雪は自室に戻ると、鏡の前に座った。
自分でも驚くほどやつれている。
あと二日しかない。
何かをしなければ…
早く探し出さなくては…
そんな思いが胸の奥底から湧き出てくる。
でも、いったい何をしたらいいの?
これ以上、どうすればいいの?
もう、あたしの手にはおえない。
でも、探さなくっちゃ。
そうしないと、あたしは元の生活に帰ることになる。
お客の機嫌をとり、お客に話を合わせ、おかしくもないのに笑い、その気もないのに、いかにも気があるフリをする。
足の先から髪の毛の一本一本まで、アルコールと嘘に染まった、あの生活に…
そこから出られる切符が、この屋敷の中にある。
すぐ手の届く所にあるはず。
でも、それをどうする事も出来ない。
このまま時間切れを待つの?
そんなのイヤ!
絶対に探し出す。
…でも、もう何をしたらいいのか分からない。
いったい、どうしたらいいのよ!
あたしは、どうしたらいいの?
鏡の中の女は、泣きそうなほど顔を歪めて、ヒステリックに首を左右に振った。
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