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手紙 消しゴムから、人間へ

[833]  デフレーター  2010-08-06投稿
前略
お元気ですか。
私は今日もあなたの手の中で
身を削りながら頑張っています。
思えば私とあなたの付き合いはとても長く
あなたが小学校に上がってからは今に至るまで、ほとんど毎日あなたに使って頂いています。
ご存知のように、私には数多くの仲間がいます。
形から色まで、様々な仲間がいます。
しかし残念なことに、
私たちはあなたの手の中で命を全うしたことは滅多にありません。
たいていは、あなたがあまりに強い力で私たちをこき使うために
体の一部が切り離されてしまったり
扱うのに都合が悪い大きさになると
すぐ別の仲間に乗り換えてしまうのです。
そうして私たちは、
見るも無惨に体を削られたままほうり出され、
忘れさられていくのです。
本当に悲しくてなりません。
私たちは思います。
どこかに最後まで私たちを活用してくださる方がいないものかと。
私たちの仕事といえば、
書類やノートの間違いを正すことくらいしかありません。
しかしそれでも
それしか取り柄がなくても
最後の最後まで使われることが
私たちにとってこの上ない幸せです。
覚えていますか?
あなたが小学生だったころ。
あなたはいつも通りに私を使い、
使った後に出る私の垢とも言うべき物体を
指で集めて丸めて
何やらよく分からない物体を作っていましたね。
何が楽しいのか、私には全く分かりません。
またある時は、
独特の匂いを放つ私の仲間を鼻に近づけて
眠気を覚ましていたりもしましたね。
間違いを正すしか取り柄がないと思っていた私たちにも
違う魅力があったんだと
とても喜んだものでした。
しかし年月が流れ、あなたが成長すると共に
そうした私の仲間たちは見向きもされなくなり、
間違いを正すという本来の取り柄しか見出だしてくれなくなりました。
しかしそれでも
あなたは今も私を必要としてくれています。
あなたに必要とされる限り
私は精一杯役目を果たします。
だからどうか途中で見捨てたりせず
あなたの手の中で命を全うさせてください。
私は、ずっとあなたと一緒です。

敬具

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