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夢でみた世界

[332]  2010-08-07投稿
歩道にいる老婆が黄色信号に懇願している。まだ待ってください。すると信号は黄色のまま変わらない。老婆は歩くのもおぼつかないので、僕はその横断歩道の半ばにいた折り鶴を拾い、その羽を広げた。鶴は上に向かって飛んでいった。いつのまにか老婆は消えていた。信号が赤になったので、僕はその横断歩道に対し垂直に延びる、青信号の横断歩道の上へ行く。電柱に立てかけてあったブラシをもち、そのいくつもの白いラインをかきけしてゆく。上から声がした。

いいのか。わかっているはずだろう。

僕は言った。

わざとだ。

僕の体が消える。


目が覚めると、病室のような場所にいた。薄暗い部屋にベッドがふたつ、窓がひとつ。僕はベッドに横たわっていた。体を起こす。声の主が、窓際の椅子に座って、冷酷な表情でこちらを見ていた。他方の壁沿いには椅子が4つ等間隔に並んでいて、若い男女が交互に座っていた。右側の二人、左側の二人はそれぞれカップルのような雰囲気ではなしている。左側と右側の間の交流はないのだが。左側の二人はいい感じの大学生カップルといったところだろうか。こちらを見て、あからさまに僕についてこそこそ話している。右側の二人は水商売でもやっていそうな、派手な風貌の男女だった。こちらは僕には全く興味がないらしく、大きな声で恋愛話に花を咲かせている。

まじでお前可愛いから自信もてよ。
本当に?あたし、よく男の人にオカマっぽいって言われるんだけど、あんたは言わないんだね。

そこで声の主が僕に問う。

何故ここにきた。

僕は口を開く。

それはー

それは。

続きを話そうか迷っていると、声の主が言った。

お前の声は、あの女の将来の声だな。

声の主は、右側の派手な女を指差す。

女は信じられないといった顔で声の主を睨んだ。隣の男がその女を見る表情が急激に冷めてゆくのが見えた。






しばらくして、僕はその女ーソウとデートをした。喫茶店で待ち合わせ、僕らは30万円のコーヒーを飲んだ。60万円分をソウが払ってくれ、変わりに夕食の310万円を僕がおごった。僕は次の仕事に一週間遅刻し、五分間の労働をすませた。

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