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欲望という名のゲーム?95

[526]  矢口 沙緒  2010-08-08投稿



「よし、決まった。
じゃ、さっそく持ち駒の交換だ」
「待って!
まだメンバー不足よ」
深雪が言った。
「孝子がどうしても必要よ」
「でも、孝子さんは全然やる気ないわよ」
「そうだよ。
こいつの言う通りだ。
孝子はこの宝探しに全く関心を示さない。
協力させるのは難しいぞ」
「でも、あの子が一番賢いのも事実よ。
絶対にあの子の協力が必要よ」
深雪は言い張った。
「よし、分かった。
深雪がそこまで言うならそうしよう。
だが、うまく孝子を誘えるか?」
「あたしが言い出したんだから、あたしがやってみるわ」

深雪は孝子の部屋をノックした。
「どうぞ」
孝子の返事がある。
深雪が部屋に入ると、孝子はソファーに腰掛け、何か分厚い本を読んでいた。
「ねぇ、あたし達に協力してくれないかな」
深雪が遠慮がちな猫なで声を出した。
「なにを?
私、忙しいんだけどな」
その言い方に、深雪は少し不愉快なものを感じた。
ソファーにくつろぎ、本を読んでいるというのに、いったい何が忙しいのか。
しかし、ここは下手に出るしかない。
「ほら、例の宝探しの期限が今日一日だけでしょ。
それでね、あたし達は協力する事にしたのよ、四人とも。
あとは孝子だけなんだけど、あんたも協力してくれないかな、あたし達に」
「私はやめておくわ。
興味ないもん」
孝子は本から目を離さずに答えた。
それも深雪は気に入らなかった。
「兄弟がみんな協力するのよ。
ねぇ、お願いよ。
協力してよ、孝子」
「しないって言ったでしょ」
ここまでが深雪の限界だった。
彼女は完全にキレて、大声を上げた。
「なによ、その口のききかた!
あんた、姉さんの言う事がきけないの!」
思わず声を荒立ててから、深雪はしまったと気付いた。
だが、もう遅い。
孝子がパタリと本を閉じ、深雪を見た。
しかし意外にもその顔は、何か嬉しそうだった。
「そういう言われ方って、いいわよね。
私、ずっと憧れてた。
最初から遠慮なんてしないで欲しかったの。
はっきり
『協力しなさい』
って言って欲しかった。
だって、姉さんじゃない。
妹に遠慮なんかしないでよ。
私、いつでも協力するから」
そう言って、孝子は立ち上がった。



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