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子供のセカイ。201

[407]  アンヌ  2010-09-02投稿
そんなジーナの不信に気づいたのか、ラドラスは得意げに唇の端をつり上げると、マントの下から何かを取り出した。
「何でかっていうとだな、舞子様の想像の力を圧縮した、このボールのお陰さ。」
取り出されたのは、地下の青い空間に穴を開けるのに使った、白いゴム製のボールだった。
ジーナはまじまじとボールを見つめ、上機嫌のラドラスとボールとを見比べた。
「これは支配者の力で作られたボールなのか!?」
「ああ。箱を開いた時、すごい力を感じただろ?こいつはあの空間に穴を開けるだけじゃなく、俺達のような存在の力のバランスをも崩す。わかりやすく言えば、犠牲にした能力が一時的に戻るってことだ。」
嬉々としたラドラスの様子に、ジーナは違和感を覚えた。それに彼は今、「舞子様」と口にした。彼が領域から無理やり連れ出され、働かされていることに不満を感じているなら、そんな呼び方はしないはずである。ましてや、その相手の力を自分のことのように誇らしげに話すことなど……。
(まるでこいつが、支配者達の仲間であるかのような――。)
不安がゆっくりと全身を包み込んだ。ジーナはたまらず唇を噛む。
(いや、そんなはずはない。こいつは絶対に間違った方へ味方につくような愚か者ではない。)
しかしジーナを見つめるラドラスの瞳は、相変わらず底知れぬ光をはらんでいる。
その時、王子が耐え切れなくなったように口を開いた。
「ジーナが僕を逃がしてくれた後、扉の前で途方に暮れてたら、ラドラスが助けに来てくれたんだ。ボールの効力の話を聞いた後、すぐにラドラスが持ってきたボールを使って月の能力を取り戻し、ジーナと僕の傷を治した。」
「あ、そうそう。最後の敵は俺が倒しておいたから、安心しろよ。」
ラドラスは気軽にそう言って、頭の後ろで腕を組む。ジーナの弱さを指摘されたようで少し癪に障ったが、それより、今度は王子の発言に気掛かりな部分があった。
「あのでかい猫はどうしたんだ?」
王子は悲しそうな顔になると、静かに首を横に振る。それだけで意味がわかり、ジーナは無言で頷いた。もともとは耕太がその場しのぎで生み出したものだ。ついに存在を構成していた想像の力が尽きて、消えてしまったのだろう。
(よく闘ういい奴だったが、仕方ない。)
ジーナは重くなりそうな気分を散らすように頭を振ると、話を本題に戻した。

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