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欲望という名のゲーム126

[646]  矢口 沙緒  2010-09-11投稿



     3

「どうやら、そのようですね。
だが、ゲームを終わらせる前に、いくつか聞いておきたい事があります。
全てを終わらせる前に…」
「なぁに?
質問があったら、どうぞ」
「なぜ孝子様ほどの方が、金銭にこだわります?」
「そうね、金銭にこだわらなかった、と言ったら嘘になるけど。
でも、それ以上に勝敗にこだわったのよ。
それが雅則兄さんとの最後の約束だったから。
前に兄さんと会った話はしたでしょ。
そして兄さんとやったビトゥイン・チェスの話も…
その時、最後のゲームで私が勝ったのも話したわよね。
雅則兄さんは別れ際にこう言ったの。
『今度孝子とゲームをする時には、絶対に負けないぞ』
って、笑って言ったわ。
私も負けないわよって、そう応えたの。
それが私達の最後の約束になったのよ。
だからこのゲームには、なんとしても勝ちたかったの。
雅則兄さんのゲームに勝つために、私は私なりに必死に考えたのよ」
「もうひとつ伺っておきましょうか。
なぜ、最後にほかの方々と協力なさったのですか?
なぜあんな芝居をなさったのですか?」
「それはね、雅則兄さんのただひとつの願いを叶えてあげたかったから。
ねぇ、鹿島さん。
鹿島さんはどうして雅則兄さんが、こんな奇妙なゲームを実行したのかを考えた事がある?
この宝探しゲームを始めた本当の目的を、考えた事がある?」
「本当の目的?」
「兄さんはね、この宝探しの謎は、一人の人間の力では解く事が出来ないと考えていたのよ。
そして最後には、必ず兄弟全員が協力する事になると、そう考えたのね。
兄さんはね、全員を協力させる事によって、失われた兄弟の絆を結ぼうとしたのよ。
それが兄さんの本当の目的。
それが兄さんの、ただひとつの望みだったのよ。
私はその願いを、叶えさせてあげたかった」
「結果はどうでした?」
「残念だけどダメね。
人間関係っていうのは、雅則兄さんが考えていたよりも、はるかに複雑なゲームだったのね。
私達はやっぱりバラバラになっちゃった。
でも、それが一番いいのよね。
寂しいけど、それが私達の自然な姿なのよ」
「分かりました。
もう私に質問はありません。
さぁ、孝子様とのゲームを終わらせてしまいましょう。
あなたの持っている切り札は何ですか?」



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