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君と見た空*8の3

[395]  玲唯  2010-09-23投稿


「私があの時もう少し遊ばせていれば、あんなことにはならなかったかもしれないのに……」

「角田さん、あなたのせいじゃないわ。私が止めていればよかったのよ」


 お母さんと吉澤さんは、涙声になりながら言う。


 私は2人の嗚咽まじりの声を聞きながら、お墓に目をやった。


───『お名前、何て言うの?』


 その子の名前は何だったかな。


───『吉澤───だよ』


「リク。お母さん、吉澤さんの家に行くけど、リクも行く?」

「……ううん。もう少しここにいる」

「そう。じゃあ、遅くならないうちに帰ってきなさいね」


 お母さんと吉澤さんはお墓から離れていく。


「あ、あのっ!」


 2人は立ち止まって同時に振り向いた。


「吉澤さん。その子の名前って……」

「空人」

「え?」

「空に人って書いて、アオト」


 空人?
 そんな……
 嘘、でしょ?


 私は愕然としてその場に立ち尽くす。


 アオトが死んでいた?


 じゃあ、今までのアオトは何?


 優しく笑いかけてくれて、抱きしめてくれた、アオトは何?


───『吉澤空人だよ』


 はっきり思い出した。



 こんなの嘘であってほしい。


 夢であってほしい。


「……アオト」


 アオトに会いたい。


 その時誰かの足音がした。


 私は弾かれたようにその方向を向く。


「アオト……」


 アオトは何も言わずに無表情でこっちに歩いてくる。


 私の隣に来ると、アオトはお墓と向かい合ってお墓をじっと見つめた。


「ねえ、アオト───」


 私は聞かずにはいられなくて口を開いた。


 でも最後まで言えなかった。


 だって、アオトは今にも泣き出しそうに顔を歪めていたから。


「これ、俺の墓なんだ」

「え……」


 聞きたくない言葉だった。


「信じられないよね。俺、死んでるのにここにいるって」


 俺の墓。死んでる。


 アオト。聞きたくなかったよ、そんな言葉。


 今からでも遅くないから、嘘っていって?


 夢って言ってよ。

「こんなの、信じられないよね」


 嘘だって、夢だって言ってくれない。


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