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君と見た空*9の1

[372]  玲唯  2010-09-27投稿


09.別れ


 するとアオトは私の手を取って、私の手を自分の胸にあてた。


 私は思わずアオトの顔を見る。


 アオトの手は氷みたいに冷たくて、アオトの心臓の鼓動は私の手に伝わってこない。


 信じざるを得ない。


「ごめんね。本当は言わないでおこうと思ってたんだ」


 そう言うとアオトは私の手をはなして、また悲しげな顔をした。


「俺のこと、怖い? 幽霊だしさ、俺」


 私は首を横に振った。


 不思議なくらい、全然怖くない。


 それはきっとアオトだからだと思う。


「そっか」


 アオトはそう呟くと、薄く笑ってお墓の前にしゃがんだ。


「母さんの言ってること、全部本当だよ。リクともっと遊びたくて追いかけたんだ」

「……」

「死んだあと、どーしてもリクに会いたくて、時間かかったけどこうして会いに来た。もっとリクと話したかったし、伝えたいことあったしさ」


───『俺じゃダメかな?』


「でもいっぱい話せたし、伝えること伝えれた。だからもう思い残すことはない」


 ちょっと待って。


 思い残すことはないって何?


 まるで、もう会えなくなるみたいな感じ。


「今日太陽が沈んだら、俺はあっちに戻る」

「え?」


 あっちって、天国のこと?


 じゃあ、もう会えないの?


 例えアオトが幽霊でも、それは嫌だよ。


 夕日は沈みかけていて、そのせいかアオトの体からは淡い光を放つ粒子が舞っている。


 ちゃんと、あの時の返事をしなきゃ。


「アオト、こっち!」


 私はアオトの手をつかんで走った。


 アオトに見てほしいものがあるんだ。


 *


 長い階段を止まることなく駆け上がる。


 ふと横を見ると、太陽は半分くらい沈みかかっていた。


 早早くしないと、アオトが消えちゃう。


 私はアオトの冷たい手を強く握った。


 しばらくして、やっと階段を登り終える。


 私がアオトに見てほしかったもの。


 それはこの高台からみえる街の景色。


「眺めいいでしょ」

「うん。そーだね」


 アオトは高台から見える景色を目に焼き付けるように眺めている。


 私はそんなアオトの顔を見たあと、1度はなしたアオトの手を握った。

「……いかないで、アオト」


 握っているアオトの手を、ありったけの力で握る。


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