携帯小説!(スマートフォン版)

トップページ >> ホラー >> だ〜れだ。

だ〜れだ。

[1291]  キンセイ  2010-10-09投稿
「ねぇ!どうすんのさ!マジでヤバいよ!?」

ヒステリックな女性の甲高い声が響く。

「クッソ…!扉が…開かねぇ…!!窓もかよ!?」

開かなくなった扉や窓を、男が力任せに開こうとしていた。

「やっぱり祟りなんじゃないか!?」

怯えた表情をする男。

「帰りたいよぉ…もうここは嫌だょ…」

しくしく泣き始めてしまった女性達。


ここはとある曰く付きの古びた洋館。
地元の人間は絶対に近づかない。
そんな場所に仲の良い連中が好奇心で集まって、館内をペアで探索している時に閉じ込められたのである。

「おい、お前らもう泣くな。気が滅入る…」先ほど扉を開こうとした、榎本が泣いている女性に口を開いた。

泣いている女性の名は井内と小田である。めそめそと泣いている。

「と、とにかく!何か脱出方法を考えないと…」まだ怯えた表情の男、植田が言った。

「マジ最悪!」ヒステリックな阿部が壁をがしがし蹴っている。

次第に辺りは日も暮れて、直に完全に闇の世界が訪れようとしていた。

5人は持参した懐中電灯の明かりを拠り所にして今後の事を相談している。その会話の中で放った一言で空気が変わった。

「ペアになってもう一度出口を探す」

おかしい事は何もない。それが「自分」を安心させる事も出来るし「相手」も安心するのだ。

現にこの洋館ではペアになって探索しているのだ。

????!

「お、おい…俺達はペアになっていたよな?」声を裏返して植田が切り出した。

「……」

他の4人は今の状況を理解しようとしているのか、声を発する事はなかった。ただ、誰とも言わずお互いの距離を少しずつ取り始めた。要るはずのない「5人目」に対して。

榎本が言う。
「阿部!お前は俺とペアだったよな!?」
阿部が言う。
「私は植田君とペアだったわよ!?」
植田は言う。
「待ってくれ!俺は井内さんと一緒にいたぞ!」
井内は言う。
「私は小田ちゃんとペアだったわ…」
小田は言う。
「私…。私は榎本君とペアだったよ?」

パニックになるのに時間はかからなかった。
この中で存在する筈のない「5人目」がいる。

誰が最初からいて。誰が最初からいなかったんだろう。

暗闇が「4人」の恐怖を飲み込み…そして。

闇から浮かび上がる残った「1人」の口が動いた。

「わたしはさいしょからいなかった」

「だ〜れだ」

感想

感想はありません。

「 キンセイ 」の携帯小説

ホラーの新着携帯小説

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス