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がんばったで賞 72 〜5人に入った亀裂〜

[326]  るー6  2010-10-14投稿
『カズヒロのことは私好き。サユとはそういう関係じゃないって信じてるから…。』
「アキ…。」
カズヒロは、許してくれたんだと思い、アキを抱きしめようとした。
しかし、アキに嫌がられた。
「なんで…。」
『でもねカズヒロ…。』
アキの表情が、どんどん強ばっていく。
『私の心に付けた傷は、大きくて深いの。』
「…。」
言葉にできないカズヒロ。『私たち…少し距離を置こう。』
「アキ…落ち着いて。」
『落ち着いてる。しっかり考えてる。私の心の傷が癒えるまで、少し距離を置こう。』
アキは、
『今までありがとう…。』何とか作った笑顔で最後に伝えた。
アキの笑顔は、少しずつ闇に消えていった。
「そんなの出来るかよ…。」


「そんなの出来るかよアキ!」

カズヒロはアキに向かって叫んだ。
聞こえないのに。
「俺は出来ねぇぞ!」
カズヒロが叫んでいるのも知らず、アキはコテージへと戻っていった。

その光景を見たヒロとユウタは、アキの後を追った。
コテージで1人泣いていたアキ。誰にも見られたくない光景だった。
あの時の悔しさと、怒りと、つらさが入り交じった、何とも言えない気持ちで涙があふれた。
その時、扉を誰かが叩く気配がした。
アキは、渋々扉を開けた。『ヒロ…ユウタ。』
「ちょっといいかな。」

「…アキちゃんは、カズヒロに対してどう思ってる?」
ヒロの質問。アキは黙ってしまった。
「おい。今そういう事聞くなって…。」
するとアキが、ノートを取り出して、
『ヒロもユウタも、結局私の心情を片っ端から聞きたいだけなんだね。』
と書いた。
「アキちゃん。違うんだよ。」
ユウタが必死にフォローしても、
『違うわけないじゃない!ヒロの最初の質問がそれだもん。もし私に対して心配していたら、そんなこと言うはず無いよ。』
「ヒロがそんな事言うから…。」
ユウタがそう言った時はもう、アキに追い出されていた。
その後のキャンプは、誰も口を聞かず、地獄のような時間が過ぎていった。
帰りの電車内でも5人バラバラに座った。
カズヒロはアキの近くに座ろうとしたが、出来ずに終わった。
こうして、夏休みのいい思い出になるはずだったキャンプは、波乱を生むキャンプとなってしまった。

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