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子供のセカイ。212

[398]  アンヌ  2010-10-25投稿
大方、美香と耕太を取り逃がしたことで、実力のなさを露呈したような形になってしまったのだろう。
(いや、それとも――。)
覇王に対し反逆精神を抱いていることを見破られたのか。
「……僕たちをこのまま働かせておいていいの?」
傍らの王子が抑えた声で放った一言に、ジーナは物思いから覚まされた。
少年はふうん、と目を細める。
「そっちのお兄さんは、自分がどういう立場にあるのか、わかってるみたいだね。」
ハントを後ろに残して、少年はゆっくりと王子に向かって歩み寄った。王子は微動だにせず、さくさくと草を踏み締めて目の前で立ち止まった少年の、そばかすの浮いた白い顔をじっと見下ろした。
「ハオウ様は、お兄さんたちのこと、消したがってたよ。どうせ光の子供の場所も知らないだろうし、生かしておく理由がないからね。」
たかだか六、七歳に見える少年が、そんな物騒な言葉を軽やかに舌に乗せてしゃべる姿は、見ていてあまり心地好いものではなかった。特に純粋な王子はなおさらで、形の良い眉をぎゅ、と寄せて表情を歪めた。
「それで、どうする気なんだい?」
「どうもしないさ。舞子ちゃんに感謝したら?お姉さんの仲間を消したりできないって、そんな理由で、あんたたちに手を出さないことにしたらしいからね。」
王子は不意を突かれたように黙り込んだ。戸惑った様子でジーナを振り返る。ジーナも同様に、困惑を隠し切れずに唇をわずかに開いた。
舞子は根は悪い子ではないと、頑なに信じ込んでいる美香の姿が、瞼の裏に蘇る。王子とジーナは、それをあまり深く追及しなかったが、肯定したこともなかった。舞子は前支配者を倒し、“子供のセカイ”に華々しく君臨した。そして自分勝手に人さらいを始め、さらにラドラスの話によると、我が儘な理由で自らの故郷に軍勢を率いて攻め入ろうとしている。
そんな舞子を、信じられるわけがなかった。
二人が領域を出てまでラディスパークに来たのは、一重に美香への信頼があったからだ。強いようで危うい少女に、肩入れしたくなったという気持ちもある。
しかしこの少年は、二人が助かったのは舞子のお陰だという。
「ひどいなあ。そんな変な顔しないであげてよ。まるで舞子ちゃんが、ものすごい悪党か何かみたいじゃないか。」
少年は大して庇うような感情もこめずに言うと、「そういえば、」とハントを振り仰いだ。

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