携帯小説!(スマートフォン版)

トップページ >> ファンタジー >> 子供のセカイ。215

子供のセカイ。215

[420]  アンヌ  2010-11-09投稿
ジョナというのが何かはわからなかったが、ジーナはひとまず頷くと、王子の背中を押して促した。王子は未だ不安そうな目でハントの方を見ていたが、やがて前を向き、自分の意思で歩き出す。いくら考えても、結論は出ないと判断したのだろう。
ジーナもまた、近づいてくる灰色の無機質な建物を見据えながら、思考を巡らせていた。先程起こったことはあまりに奇妙すぎて、訳がわからない。それなら今は追及を放棄し、別のことに気をやった方がいい。
今後のため、早々に策を講じなければならないのは確かだった。こんなところで無理やり働かされて、舞子や覇王の計画を進めてやっている場合ではない。
あと一週間ほどでトンネルは開通すると、ラドラスはそう言っていた。
(それまでになんとかここから脱出して、美香達と合流しなければ。)
できれば、治安部隊を味方に伴って。
現状良くなっていることがあるとすれば、その点においてのみだった。しかし、ハントのあの妙な態度を目の当たりにした今となっては、ジーナはそれが果たして吉と出ると言い切れるかどうか、わからなくなってきていた。
ジーナ達より遥か後方にある中庭で、ハントは俯くようにして、じっと何かを考え込んでいた。

* * *

宣告していた通り、その日の夜、ミルバは舞子の魂の分け身の家に戻ってきた。
ジーナと王子が健在であったことを知らされ、美香と耕太は喜びに掌を打ち合わせた。しかしミルバが持ってきた情報は、決して良いものばかりではなかった。
「トンネル…!?」
美香は茫然として呟いた。膝に置いた手が震え出すのを、なんとか堪える。
それを見やりながら、耕太は居間のソファにちょこんと腰掛けて、美香が煎れた茶を優雅に飲んでいるミルバを、険しい目線で見据えた。
「それ、ひょっとして、前からわかってたことなんじゃないか?何でもっと早く教えてくれなかったんだよ。」
「知らせた所で、何も変えられないからだ。」
テーブルにコトン、と湯呑みを置いたミルバは、言葉の見つからない二人を静かな表情で振り返った。
「コルニア城にさえ侵入できていない身では、何も成し得ないだろう。それなら悪い情報は差し迫ってから知った方がいい。どの道、解決する道はただ一つ。舞子に到達して、その行為を止めるしかないのだからね。」

感想

感想はありません。

「 アンヌ 」の携帯小説

ファンタジーの新着携帯小説

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス