踏み出す一歩(後編)
次の日、私は高台に行き、杉の木の下にいる彼に話し掛けた。
「ずっと待ってるんだね、10年前のあの日から…。」
彼はまたやさしく笑って言った。
「うん。ずっといっしょにいようって、10年前のあの日に約束したんだ。」
「彼女はもうここには来ないと思う…。」
「えっ?」
「昨日、テレビで見た。今はもう別の家族がいるみたい。」
「……そうか、止まったままなのは、僕だけだったんだ…。」
また淋しそうな顔をして彼は言った。
「じゃあ、僕もそろそろ行かなくちゃ。」
「ちょっと待って!!」
「ん?」
「いや、あの、ほら!そんなに慌てて行かなくてもさ、せっかく仲良くなったんだし。もっとこう、いろいろ話とか、したいじゃん。」
自分でも何が言いたいのか、わからなかった。
そんな私を見て、彼は、
「あははっ!君は本当にいい子なんだね。昔からそうだったよね。いつも高台にいる僕のことを気に掛けてくれて。」
一番の笑顔で笑ってくれた。
「知ってたの!?」
「もちろん知ってたさ。そして嬉しかった。出来ればもっと早く出会いたかったけど、最後にこうやって話せて本当に良かった。ありがとう。美咲ちゃん。」
そう言って彼は去っていった。
10年もの長い間、思い出といっしょに居座り続けたこの高台から…。
彼は止まったままの時間から抜け出し、また動き始めたのだ。
自分でもなんとなくわかっていたのかも知れない。
彼が人間でないことに。
そして彼同様10年間ずっと思い続けた恋が決して実らないことも。
「私も止まってらんない。」
つらいけど、涙が止まらないけど、前に進まなきゃ。
彼のように。
「ずっと待ってるんだね、10年前のあの日から…。」
彼はまたやさしく笑って言った。
「うん。ずっといっしょにいようって、10年前のあの日に約束したんだ。」
「彼女はもうここには来ないと思う…。」
「えっ?」
「昨日、テレビで見た。今はもう別の家族がいるみたい。」
「……そうか、止まったままなのは、僕だけだったんだ…。」
また淋しそうな顔をして彼は言った。
「じゃあ、僕もそろそろ行かなくちゃ。」
「ちょっと待って!!」
「ん?」
「いや、あの、ほら!そんなに慌てて行かなくてもさ、せっかく仲良くなったんだし。もっとこう、いろいろ話とか、したいじゃん。」
自分でも何が言いたいのか、わからなかった。
そんな私を見て、彼は、
「あははっ!君は本当にいい子なんだね。昔からそうだったよね。いつも高台にいる僕のことを気に掛けてくれて。」
一番の笑顔で笑ってくれた。
「知ってたの!?」
「もちろん知ってたさ。そして嬉しかった。出来ればもっと早く出会いたかったけど、最後にこうやって話せて本当に良かった。ありがとう。美咲ちゃん。」
そう言って彼は去っていった。
10年もの長い間、思い出といっしょに居座り続けたこの高台から…。
彼は止まったままの時間から抜け出し、また動き始めたのだ。
自分でもなんとなくわかっていたのかも知れない。
彼が人間でないことに。
そして彼同様10年間ずっと思い続けた恋が決して実らないことも。
「私も止まってらんない。」
つらいけど、涙が止まらないけど、前に進まなきゃ。
彼のように。
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