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子供のセカイ。220

[365]  アンヌ  2010-12-01投稿
「明日から、ちゃんとしなきゃダメね。」
美香は舞子と共同で使っている子供部屋のドアに手を触れると、大きく息をついた。
不安は拭えない。舞子を説得できる自信も、だんだんしぼんできている。
(それでも、やるしかないんだわ。)
もう後戻りはできない。
美香の覚悟云々より先に、美香の立つ背後には平和に暮らす“真セカイ”の人々がいるのだから。


それからの四日間は、美香、耕太、王子、ジーナにとって、もどかしく、焦燥に駆られた日々となった。
朝早くにミルバが発った日、美香と耕太は、耕太の想像の力によって透明な姿になり、足音を消し、コルニア城の城壁付近まで偵察に出かけた。
変身などしなくとも、こうして前やったように透明人間になればいいのではないかと、耕太が提案したことだった。そこでひとまず、この方法を試してみることにしたのだ。
コルニア城は遠目に見ると、ただ美しく輝く白亜の城だが、近くから見上げると、おかしな点が多々あることに気づいた。
城の構造が、どう見ても妙なのだ。ありえない場所から塔が生えていたり、城の上階にアラビアンな造形の広間が張り出していたり。城壁――そもそも舞子がモデルとしているシンデレラ城には城壁がないはずであるが――もおかしかった。波打つように上がったり下がったりを繰り返し、その上を歩く歩哨たちは中の階段を登ったり下りたり、大変そうだった。また、ざっと数えただけでも、城壁には扉が四つついていた。
「舞子の奴、好き勝手に想像して城を作りやがったな。」
「ええ。これじゃあ、中も変な構造になっているに違いないわね。」
二人がこそこそと会話を交わした時、「そこに誰かいるのか!」と、突然背後から鋭い声が放たれた。
二人は反射的に、後ろも見ずに全速力でその場から逃げ出した。見つかった恐怖で、心臓が太鼓のようにドコドコと鳴っていた。しばらく街中を走って、大丈夫だという頃合いを見計らってから、ようやく立ち止まった。
二人は息を切らせて互いに顔を見合わせた。通りには光の子供の領域の家から出た、様々な姿の想像物が溢れ返っていた。
長い尾を振り回しながら歩いてきたトカゲ男の尻尾をひょいと避けた耕太は、他の想像物ともぶつからないようにしながら美香の手を引いて、路地裏に入り込んだ。

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