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子供のセカイ。221

[347]  アンヌ  2010-12-03投稿
「……しまった。声を透明にするの忘れてた。」
耕太がごまかすように笑うと、美香は呆れてため息を吐いた。
「問題はそこじゃないでしょ。あんなにたくさん兵士がいたら、絶対にすぐに見つかって捕まっちゃうわ。やっぱりミルバの言う通り、変身しないと。」
「でも、声とか、その他諸々全部消せば問題ないだろ?」
「どれだけ精神の力が削れると思ってるのよ。それじゃあ、いざって時に気を失っちゃうじゃない。」
「あー、そうか…。」
二人はそれから少し言い合いをしたが、結局再び城まで戻ることにした。今日中に城の構造について、外見からでもあらかた知っておかなければ、計画が立てられない。特に耕太は特訓の時間が必要なので、あまり他のことに時間を割けなかった。
(私さえ、力を失わなければ。)
美香はもう何度目かわからない葛藤に歯を食いしばったが、すぐに心を落ち着けた。あの時は、あれ以外にどうしようもなかった。
隣に立つ耕太を盗み見る。眉を寄せたまま城をじっと睨み上げる横顔からは、迷いが感じられない。
耕太をあの何もない闇から連れ出すことができた。それだけで充分だ。そして彼は今、こうして美香の隣に立ち、同じものを見据えてくれている。
美香は一度、瞼を閉じて気を取り直すと、再びコルニア城への侵入方法について考え始めた。

ジーナと王子は強制労働施設の食堂にいた。
朝の労働が終わり、食堂は大勢の猛者たちで賑わっている。そこには様々な容姿の者がいた。背丈が三メートルもある筋肉隆々の大男、鎌のように鋭利な爪を持った猫女、マントに身をくるんだ得体の知れない生き物……。他にも大勢いる。人型でない者たちには、別の部屋が割り当てられているようだったが、石壁を打つ轟音から、狂暴な怪物であることが容易に想像できた。
彼らは皆、ラドラスと似た考えを持つ者たちである。“真セカイ”を支配することで光の子供を従わせ、永遠の命を得ようと目論んでいるのだ。
王子は周囲を警戒しつつも、目立たないように大人しくしていたが、しかし彼らの雰囲気はちっともまがまがしくなく、むしろ食堂は陽気な笑い声に満ちていた。あと少しでトンネルが完成するので、興奮を抑え切れないのかもしれない。そういえば、もう三年も前からこの計画は進められてきたのだ。三年越しの計画の達成に喜びを感じないはずがないと、王子は一人静かに思案した。

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