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いつもと違う日常

[691]  73  2010-12-04投稿
いつもの朝。いつもと同じ時間に起きた。
そして、いつもと同じ時間に学校へ向かった。いつもと同じなのはそこまで。

学校は鈍い鉄のにおいで充満していた。
下駄箱には、ひとつひとつに赤い何かがこびりついていて不気味だった。
「キャァァア」
誰かの叫び声。こんな猫撫で声なのは担任の森岡 一美しかいない。
コツ…コツ…コツ…
近づく足音。私はため息をついた。
「ゲームは終わりよ。麻子ちゃん。」
コツ……
「私が気付いてないとでも思って?」
「……そうよ。あなたよ。手足と頭を何度数えても1セット足りなかった。あなただったのね。三咲。」
「ふざけないで。私、みんなみたいに早起きじゃないわ。」
「どうして?どうして…私だって分かったの?」
「そんなの簡単よ。こんな事しそうなのはあなたくらいだから。ただそれだけ。去年、教頭先生を殺したのもあなたでしょう?あと、この区域にいるほぼ全ての小動物を殺したのも…私の予想じゃあなたね。」
「そうよ!あの時も1匹足りなかった。あなたの犬がね!」
「私は麻子ちゃんのことなら何でも分かる。その内、警察が来るわ。早く逃げなさい。一生牢屋で暮らすのは…嫌でしょう?」
「この私が牢屋なんてお断りだわ。」
「だったら早く行きなさい。捕まるまでの時間を有意義に過ごしてね。麻子ちゃん。せいぜい2分くらいかしら。急いで走らなきゃ…鬼ごっこは終っちゃうわよ」
「…三咲。私をかばう気?」
「いいえ。ただ私はこのスリルが好きなだけ。楽しいじゃない。かばうのは『ともだち』だからよ。」
「『ともだち』ね。そうとも言うんじゃない?ただ、私には『共犯者』にしか思えないけど。またね。三咲。」
「ええ。また地獄で会いましょう。最高の殺人鬼さん。」
「いいネーミングね。いつか使わせてもらうわ。ふふ。じゃ、ばいばい。」
それを最後に麻子は闇に消えた。三咲は地面に座った。とても冷静に、そして不気味に…。

「大丈夫ですか!」
「あぁ警察の方ね。えぇ、大丈夫です。」
「で、犯人はどこへ?」
「犯人は……闇に消えて行きましたよ。」
「逃げたってことかい?」
「まあ、そんなとこです。」
一体私は何がしたかったんだろう。あくまでも、かばうような真似はしていない…はず。
それから、三咲を見たものは誰ひとりいなかった。

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