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Kiss me!*9

[428]  玲唯  2010-12-15投稿


 その日の放課後、私とナナミな教室のベランダにいた。


 私はベランダの壁に頬杖をついて、グラウンドを眺めながらため息をついた。


「何か最近疲れる」

「えー、何で?」

「あいつのせいで」

「ああ。ケイタくんね」


 壁にもたれていたナナミは、私と同じ体勢になってグラウンドを見た。


「いいじゃん、好かれてて」

「よくないよ。あいつむかつくし」

「そーかなあ……」


 そうだよ。


 いきなりキスするし、自分勝手だし。


 本当、嫌な奴。


「あ。あれケイタくんじゃない?」


 ナナミが指さす方向にはサッカー部がいて、その中にはナナミが言ったようにケイタの姿があった。


 部活やってたんだ、あいつ。


 シュート練習をしていたケイタが蹴ったボールは、ゴール横のフレームに当たって私たちの下に転がってくる。


 こっちに向かってくるケイタを見て、私が隠れようとした時だった。


 ナナミは私の後ろに回って私の右腕を掴んだ。


「ケイタくーん!」


 ナナミはそう言って、私の腕を上げて大きく横に振った。


 ナナミの声に気づいたケイタは、私の方を見て笑いながら手を振りかえしてくる。


「や、止めてよ!」


 私がナナミの手を慌てて振り払うと、ナナミは私の後ろから出てきて私の横に立った。


「ユキが頑張って、だってさ!」

「そんな事言ってないでしょ!」


 ナナミの馬鹿。


 グラウンドにいる人、皆こっち見てるじゃん。


 私は恥ずかしくてしょうがなかった。


 ケイタはこっちを見ながらにこにこしている。


 私はケイタに向かって、早く行けって手で合図した。


 ケイタは小さく手を振って、ボールを蹴りながら走っていった。


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