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子供のセカイ。230

[356] アンヌ 2011-01-27投稿
だからこそ、このサンタや目の前にいる少年は、他人とは違う知識を持っていたのだろう。
すべてミルバに教わったことだった。

『彼らは舞子のことをさほど気にかけていない。だから私たちの味方にはなりえないし、恐らく敵にもならないよ。』

神妙な顔つきで言われた言葉が、胸中に蘇る。舞子の計画に、ラディスパークの住人が加担する可能性はないということだ。
人さらいならぬ想像物さらいが起きている、ラディスパークの外の領域の想像物たちだけが、ただ“子供のセカイ”の行く末を案じている。ジーナや王子も、ある意味ではその一員だといえるだろう。
(できるだけ、ラディスパークの住人とは関わらない方がいいんだわ。)
舞子はただでさえ支配者の座を乗っ取り、ラディスパークを、それどころか、“子供のセカイ”全体を混乱におとしめている。これ以上、彼らに介入すること自体が間違いなのだ。
そして今、もう一つ重要なことがわかった。
白の乙女たちが過ぎ去り、また好き勝手に歩き出した群集の中で、美香は立ち止まったまま、震える拳を握り締めた。
――少なくとも、姿を変えれば、舞子の想像物は美香に気づかない、感知できない。
城への侵入は可能だということが約束された。
(後は耕太の想像力と……私に、かかってる。)
美香はス、と表情をなくすと、首をコルニア城の方へ向けた。
覚悟を決めるまでに、もう二日しか残されていなかった。


耕太は集中していた。常に精神を絞り続けるのは、並大抵の技ではない。
しかし、美香の身の安全がかかっている以上、精神統一を怠るわけにはいかなかった。
「ふー…。」
耕太は鞘のない真剣を両手で構えたまま、大きく息を吐き出した。
何もせずだらだらと美香の帰りを待つより、少しでも剣術の稽古をしておこうと思ったのだ。その方が集中力を持続できるという理由もある。
美香に一応断って、リビングの机やソファを脇に片付けさせてもらい、耕太は裸足になってその中央のスペースで剣を構えていた。
目を閉じ、“生け贄の祭壇”で説かれた、ジーナの教訓を思い出す。

『いいか。一度剣を抜いたら、相手を殺すくらいの気持ちでかかれ。これは玩具じゃない、人を傷つけるための道具だ。これを抜くような状況では、相手もお前の命をもらう気でいるということだ。』

耕太はぶるりと身震いした。

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