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子供のセカイ。231

[367] アンヌ 2011-01-27投稿
妙な緊張感に汗ばんできた掌を、そっとズボンの裾で拭う。目を開けると、曇り空の合間から窓を通してわずかに入ってくる光源に、抜き身の刀身がなめるように光った。

『場合によっては虚仮威しも効くだろうが、生半可な覚悟では、逆にお前がやられるぞ。――まずは、抜き身の剣を持つのに慣れることだな。本当は木剣で剣術の型を身につけるのが先だが、何より時間が足りない。その稽古も一通りはつけるが、それとは別に、真剣を握る訓練を積め。いつ、どんな状況になっても戦えるように。』

耕太は夜羽部隊の隊員である、恐ろしく強い黒装束の女のことを思い出した。
確かにあの時は、ジーナの訓練のお陰で助かった。怖くて震えが来たのも事実だが、それでもなんとか殺されないように立ち回れたのは事実である。あの女にかかれば、殺傷能力のない木剣など、花の茎のように手折られて終わりだっただろう。真剣だから意味があることもあるのだ。
それにしても、逃げる方法より、戦う方法を耕太に教え込んだのは、いかにもジーナらしい選択だった。その裏には、なんとしても無力になってしまった美香を守り通さねばならないという、深刻な事情もあったわけだが……。
耕太は一閃、剣を横に斬り払った。続いて足を踏み出しながら上段から振り下ろし、返す刀で下から跳ね上げるようにして斜めに斬り上げる。
耕太は一応両利きだった。
だから夜羽部隊の女と戦った時も二刀流で戦ったのだが、ジーナには訓練当時から渋い顔をされていた。
素人が慣れないことをするもんじゃない、というのがその理由らしいが、耕太はふて腐れたように唇を尖らせて考えた。
(いっぱい剣持ってた方が絶対有利だろ。一本なくしても代わりがあるわけだし。)
単純な思考回路だった。しかし、耕太はあながち間違っていないと自分で思う。
それから、耕太は舞子のことを考えた。
舞子。美香の妹。もちろん、持ち合わせている情報はそれだけではない。
家が隣同士なこともあり、耕太は幼い時分から美香たち姉妹とよく一緒に遊んできた。同い年の美香はいいが、三つ年下の舞子は速く走れないし、遠くまで行けないし、耕太は子供ながらに少し不満に思っていたことを思い出す。それと同時に、まだ小さい妹の世話を、美香が一生懸命見ていた姿を覚えている。
(……いつから、こんなことになっちまったんだろうな。)

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