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黒を愛した弓張りの月

[896] となりのトトりん 2011-01-27投稿
まるで時計の針のように
一瞬だけ重なり合った
愛した貴女と私の時間

長い時は
刹那に過ぎ去り
残った心の灰は
今も風に掠われぬように
大切に包まれたまま


いつかまた
貴女の針に逢えることを願い

静かに歩みたいのに
私の針は
未だあの時の場所から
動けずにいるのです

まるで
茨の鎖に拘束されたように
手足は血を流し
痛みに怯えているのです


あと幾時
立ち止まり続ければ
心に剣を
心に盾を持てるのでしょう

暗ければ月の明かりを頼りに
雨が降れば両手を傘に

そう思う心が
酷く弱々しく
不安定のままなのです


まるで弓張りの月のように
私の躯体は半分に引き裂かれ
被わせた布切れひとつでは
とても隠しきれないのです


そんな時を刻めぬ針に
一体なにの価値がありましょうか

変わることのない時間に
一体なにを求めるのでありましょうか

傷口など無いに等しい私は
それでもなお
移り変わる時に怯え

瞼を閉じて黒を愛するのです

決して白に変わることのない
黒を愛すのです


弓張りの月のように
決して白に変わることのない
黒を愛すのです

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