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子供のセカイ。233

[426] アンヌ 2011-01-31投稿
ジーナはついさっきまで地下にいて、“青の混沌”から現れる敵を次々と倒していた。
以前の負けを振り切るため、より一層戦いに励んだこともあり、今回は大した怪我を負うこともなく仕事を終えることができた。周りにいた他の囚人たちから、拍手をもらったくらいである。ラドラスと旧知の仲であることを知っているらしい何人かが、馴れ馴れしく声をかけてきたが、ジーナは苛々とそれらを振り払って一人で先に上へ上がってきた。
本来、トンネルなど掘らせないために、支配者である舞子の計画を止めるためにこそ、ジーナ達はラディスパークに来たはずだ。それがよりによって自らトンネルを掘っているなど、お笑い草である。
(ミイラ取りがミイラに……というわけでもないがな。)
少なくとも、ジーナはまだミイラになるつもりはなかった。それはもちろん王子もだろう。
だが、焦りは感じている。相変わらず美香たちの消息が知れないせいで、ジーナは胸の底に広がる不安を打ち消せないでいた。
(名前を聞かないということは、まだあいつらが捕まったわけでも殺されたわけでもないという証拠だ。)
それはわかっているのだが――。ジーナは眉間にしわを寄せ、思い切り石の床を睨んだ。やはり、苛々する。こんなところでくすぶっているのは、ジーナの性には合わない。
ラドラスのこともそうだ。斬れないなら、せめて目を覚ませと一発くらいぶん殴ってやりたかったが、王子のいる手前、乱暴なことはできない。彼は他の囚人と同じように、巧みにラドラスに引き込まれ、親しんでしまっている。それにラドラスに危害を加えたせいで周りの囚人が激昂して、王子の方に襲い掛かるかもわからない。
「……クソッ。」
何だって奴は、こんなことに――。
もう幾度目かわからぬ葛藤に、ジーナはぎりぎりと腰にはいた剣の柄を握り締めた。
その時、ふと、雨の音に混じって、何か別な音が聞こえてきた。ぺた、ぺたと、蛙が床を跳ぶような、間抜けな音だ。目線を上げると、暗い石廊の先から、誰かが歩いてくる。よく見るとそれは、いつも通り裸足のハントだった。
ジーナは思わず立ち止まると、じっとハントを凝視した。
すると向こうもようやく気づいたようで、のろのろと立ち止まって怪訝そうな目でジーナを見た。ハントにしては鈍い反応だ。
「……何だ、お前か。」
「失礼な奴だな。腑抜け面に言われたくない。」

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