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子供のセカイ。235

[369] アンヌ 2011-02-20投稿
それにしても普通の人間であれば、いくらなんでも理由なしに殴っては逆上くらいするものだが、そこはハントの丈夫な身体に感謝しなければならない。
しかしハントはまだ、どこかぼんやりした顔つきをしている。ハントを見知ってから日の浅いジーナではあったが、彼が平時ありあまるくらいの生命エネルギーを振りまいて行動することは知っていたため、今が本調子でないことはわかった。
(……それも、恐らくはあの時以来、な)
強制労働施設の中庭で、前支配者ミルバが突然姿を現したあの瞬間から、ハントの様子がおかしくなったと見ていいだろう。
ミルバが実は生きていようが生きていまいが、正直ジーナにはどちらでもよかった。一度は死んだとされていた存在だ。それも舞子と覇王に力及ばず、倒されたと聞いている。確かに生きていたならば協力体制を敷けるという利点があるが、ミルバの存在は未だに曖昧模糊としている。そんな存在を勘定に入れて、戦いはできない。
しかしミルバの存在の有無は、きっとハントにとっては重要なことなのだ。我を忘れて狼狽するほどに。ならば仕方ない。ジーナが確認したかったこととは、もちろんハントに覇王と戦う意欲があるかないかということであったが、それを聞くには、ミルバの話題も避けては通れないはずだった。
「お前、相変わらずあの監査員の子供に監視されているのか」
ジーナはまず、そのことを尋ねた。
「あー、まあな。それが何だよ?」
「いや、抜け出すのが大変そうだと思ってな。もっとも、反乱を起こすなら大規模にならざるをえないから、どの道ばれることではあるのだが」
ジーナの言葉に、ハントは拍子抜けしたような間抜け面になった。ジーナはあえてにやり、と笑いかける。
「何を驚いている。貴様、前に交わした会話を忘れたのか?」
ジーナが言っているのは、ラディスパークに来た直後、裏切りをにおわせるハントと交わした秘密の会話のことである。
その時はまだ、互いに信用していなかったこともあり、「味方ごっこ」のような体裁となってしまって、すぐに敵同士に戻ってしまったわけだが。
ハントはようやくジーナの意図に気づいたらしく、目を細めた。元々悪い目つきがさらに鋭くなり、獣のように用心深く辺りを見回す。

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