携帯小説!(スマートフォン版)

トップページ >> ファンタジー >> 子供のセカイ。236

子供のセカイ。236

[388] アンヌ 2011-03-01投稿
「……その話か。ああ、確かに今なら状況的にぴったりだな。俺達はすでに覇王様の不信を買っちまったから、もう忠誠を誓う意味もない。裏切る奴らだと認識してる奴らが裏切ったとこで、予想通りだし、何も問題はねえよな?」
ハントは鼻で笑うと、睨むように真剣な顔でハントを見つめるジーナを見返した。
「お前ら、計画についてはどの程度知ってる?」
「ほぼすべてだ。ラドラスを通じてな」
「……なら、あと三日ほどでトンネルが開通することも知ってるな」
「当たり前だ。だからこうして機会を狙って」
「舞子様の姉が」
ジーナの発言を遮り、ハントは凄んだ。
「舞子様の姉がお前らの一味の中にいるってのは、本当なんだろうな?」
「美香のことか?」
ジーナは少なからず驚いた。そんなことが今、何の関係があるというのだろう。
ハントはじろりとジーナを見た後、ふいと顔を背けた。また、どこか諦めたような、それでいてひどく思い詰めた顔に戻っていた。
ジーナはこめかみをぴくりと動かしながら、歯を噛み締める。ハントが何をそんなに躊躇っているのか、まるでわからない。
「美香がどうかしたのか。あの子は確かに舞子の姉で、妹の所業を止めるためにこそ、この“子供のセカイ”にやって来たんだ。あの子に協力する形で、私と王子は領域を抜けた」
ジーナの説明にも、ハントはほとんど何の反応も示さず、ジーナはいきり立った。
「貴様、その生温い態度は何だ!覇王を倒し、前支配者ミルバの汚名を晴らすことが貴様の目指すところではないのか!」
ミルバの名前に、ハントはぴくりと眉を動かした。
沈黙が雨音の間を縫うように、湿った空気に波紋を広げる。
じりじりと燃える松明の火が、わかり合えない二人を明々と照らしていた。
「俺は、」
言いかけて、ハントはごくりと唾を飲んだ。それから、か細い声で言った。
「俺には、わからねえんだ」
ジーナは訝しげに目を細めた。
「お前らも見たよな?ミルバ様は、確かに生きていたよな?だが、違うんだ、そうじゃねえ……だってあの時、ミルバ様は俺の目の前で……いや、何を言っているんだ俺は。俺は間に合わなかったんだ。着いた時にはすでに処刑が済んでいて……違う、やっぱり俺はミルバ様を庇って……だが俺は死んだのになぜ……俺は……!」
ジーナは急変したハントの様子に呆気に取られた。

感想

感想はありません。

「アンヌ」の携帯小説

ファンタジーの新着携帯小説

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス