未来携帯
「この携帯電話は、未来と通話することのできる、画期的なものです」
幕張で開かれた東京技術博覧会。そのある一角で、ケータイを掲げながらそう喋る男が、一段高くなった小さなステージの上に立っていた。
「ケータイの中に新たな媒体となる……」
男は説明しながらポインターで背後のスクリーンを指した。
スクリーンには、そのケータイのメカニズムが図入りで映っている。
男は説明が一段落すると、聴衆を見渡した。
「そこの方。ちょっとこちらへ宜しいでしょうか……?」
男はその中の一人と目が合い、その人を指差した。
眼鏡をかけたその人物は背が高いが、見るからに気弱そうな印象をその場にいた人たちに与えた。
差された彼は、気まずそうな顔をして、自分の顔を指差した。
「そうです。あなたですよ」
男は微笑を浮かべた。
眼鏡は逃げられないと悟ると、面倒くさそうに立ち上がり、壇上に上った。
「言葉だけでは分かりにくいと思うので、彼に、実際にやっていただきましょう」
そう言うと、男は持っていたケータイを彼に渡した。
「どうぞ、自分の携帯電話にかけてみてください」
眼鏡の彼は、言われるがままに電話をかけた。辺りが静かになる。少しの間があって、
「あ、あの、通じないんですけど……」
「え!? そんなバカな……。
……通じないとなると、未来の貴方が今、電話に出られない状態にあるということかも知れません。ちょっといいですか? 何年先になってるか確認してみますので」
男は焦ったのか、返事が来る前に眼鏡からケータイを奪うようにして取り、何やら操作をした。
「……え……? 1分後……?」
男がまさに目を丸くして画面を見たとき、轟音をあげて地面が揺れ出した。
数分後には、テレビ局のヘリがその会場の上空を飛んでいた。
レポーターがカメラに向かって、淡々と喋りだした。
「ご覧ください。先程起きた地震の影響で、多くの建物が倒壊しています……」
幕張で開かれた東京技術博覧会。そのある一角で、ケータイを掲げながらそう喋る男が、一段高くなった小さなステージの上に立っていた。
「ケータイの中に新たな媒体となる……」
男は説明しながらポインターで背後のスクリーンを指した。
スクリーンには、そのケータイのメカニズムが図入りで映っている。
男は説明が一段落すると、聴衆を見渡した。
「そこの方。ちょっとこちらへ宜しいでしょうか……?」
男はその中の一人と目が合い、その人を指差した。
眼鏡をかけたその人物は背が高いが、見るからに気弱そうな印象をその場にいた人たちに与えた。
差された彼は、気まずそうな顔をして、自分の顔を指差した。
「そうです。あなたですよ」
男は微笑を浮かべた。
眼鏡は逃げられないと悟ると、面倒くさそうに立ち上がり、壇上に上った。
「言葉だけでは分かりにくいと思うので、彼に、実際にやっていただきましょう」
そう言うと、男は持っていたケータイを彼に渡した。
「どうぞ、自分の携帯電話にかけてみてください」
眼鏡の彼は、言われるがままに電話をかけた。辺りが静かになる。少しの間があって、
「あ、あの、通じないんですけど……」
「え!? そんなバカな……。
……通じないとなると、未来の貴方が今、電話に出られない状態にあるということかも知れません。ちょっといいですか? 何年先になってるか確認してみますので」
男は焦ったのか、返事が来る前に眼鏡からケータイを奪うようにして取り、何やら操作をした。
「……え……? 1分後……?」
男がまさに目を丸くして画面を見たとき、轟音をあげて地面が揺れ出した。
数分後には、テレビ局のヘリがその会場の上空を飛んでいた。
レポーターがカメラに向かって、淡々と喋りだした。
「ご覧ください。先程起きた地震の影響で、多くの建物が倒壊しています……」
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