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Drop

[350] ふく 2011-04-09投稿
君がこの世に存在してくれるだけで良かった
それだけで
きっと僕の世界は幸せで満ち溢れていた

ねぇ
今年も桜の季節が来たよ

一年前
『桜見に行こう』と言ってバスに乗って二人で出掛けたね
コンビニに寄って缶ビールを二本買って
坂道を息を切らしながら手を繋いで登った
そしてまだ桜がほんの少ししか咲いてなくて
ガッカリするよりも何だか笑えて
『せっかく頑張ったのに』って君は眉をひそめて笑った
つられて僕も笑った
小さなベンチでビールを飲んだ
『4月なのに、まだまだ寒いね』と君が肩を縮めて言った
『ほんとだよね』と僕も肩を縮めた
『また来年も見に来ようね』
君がそう言った

綺麗に咲いたよ
去年は見れなかった満開の桜
ビールは二本買ったよ
そう言えば次の日君は風邪をひいていたね
今年は暖かいよ

散って行く花びらを見ていると何だか君と重ねてしまって
一人で飲むビールも全然美味しくないし
小さく感じたベンチも一人じゃ大きい
喉を通るビールに流れない様に必死で飲み込んだ涙が混ざって少しだけしょっぱかった

『桜って何でもっと長く咲いていられないんだろう』
そう言って寂しそうに呟いた君を思い出す
だったらどうして君ももっと長く此処に居られなかったんだろう

少しだけこの季節が嫌いになりそうだよ
君を思い出しては泣いてしまいそうで
しばらくはまた笑えそうにない

もう一度笑いたいな
何でもいいからさ
君が何が言って隣で笑ってて
そしてそれを見て僕も笑って
最近良くそんな夢を見るんだ
でもね
目が覚めると決まって目尻から涙が流れ落ちる
そんな日々を繰り返し
一年が経った
僕は全然変われないよ
辛さも寂しさも弱さも
君への想いさえも

『しっかりしなよ』って少し意地悪な笑顔で君に肩を叩いて欲しい
そしたらさ
僕は『君が嘘をついたからだよ』って言うんだ

だってそうじゃないか
僕を一人にするから


『来年も見に来よう』

そう言ったのは君だったのに

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