携帯小説!(スマートフォン版)

トップページ >> 恋愛 >> 優しい君を

優しい君を

[297] ふく 2011-04-17投稿
君の我が儘を聞いた事はなかった
文句も泣き言も
付き合い始めてからすぐに仕事が忙しくなり
君からの電話もメールも無視した事もあった
自分の気持ちに余裕がなくなったせいかどうしても君の存在を投げやりにした
二日後にメールを返したとしても君は責める事なく普通に返してきたし
だからこそ許されると思いまた繰り返した
それから君からの電話はなくなった
メールも減った
僕の生活にはそれが程よかった
週末も会わずにただ家で眠る事もあった
君の家に行ってもひたすらベッドに横になりテレビを観て過ごした
どこに行きたいも何をしたいも君は言わなかったし
僕が寝ている間は食器を洗ったり洗濯をしたり本を読んだり
そうして君は僕のする事にケチも付けず
疲れているからと早く帰って行く僕を黙って見送った
いつも笑顔で『ありがとう』と言って

『自分を出してしまうと嫌われてしまいそうで怖い』
確か付き合う前に君が言った
今ならその意味が良く分かる
洗濯物を干す君の背中に食器を懸命に洗う君の横顔に
横になっている僕の肩を優しく撫でる君の掌に
見送る笑顔の裏にどんな思いがあったのか
思えば君の寝顔を見た事はない
いつも僕が早く寝て君よりも遅く起きた
ちゃんと眠れていたのだろうか
本当は淋しさで泣いていたんじゃないか

『我が儘を言ったり、嫌だってハッキリ言ったり、全てを相手にぶつける事が全てじゃない。
相手の気持ちを一番に考えて我慢をして苦しんで、あの人の負担にならない事が私の望みだから。
例えば寝る前に私を少しでも思い出してくれたらいい。相手を疑えば私も信じてもらえなくなる。
一人ではいつも泣いてる。だから会った時は笑顔でいたい。
私はそうして愛する事しか出来ない。』
君と離れてしばらくして君の友人から聞いた
そう言って君は泣いていたんだってね

最近晴れた日に君と手を繋いで草原を歩いている夢を見るよ
たったそれだけの事もしてあげられなかった
胸が苦しくて自分を責める
でも君ならこう言うのだろう
優しく僕の肩を撫でながら少し笑って
『ありがとう』って

感想

感想はありません。

「ふく」の携帯小説

恋愛の新着携帯小説

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス