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子供のセカイ。251

[300] アンヌ 2011-08-11投稿
「貴様らはさっさと城へ戻れ。私がいない間の穴を埋めぬつもりか?」
ハ!と元気よく返事をして、兵達は素早く退却した。ガチャガチャと鎧の鳴る音があっという間に遠退き、そこには覇王とミルバのみが残される。
二人は廃墟の中、少し距離を置いたまま、互いを牽制するように睨み合った。
ミルバは最初から、ここを決戦の場と決めていた。最初に両者が出会い、その後の運命を決した場所。例えただの足止めだとしても、覇王と対峙するのに、ここ以上にふさわしい場所はないと感じていた。
しかしこの場に立っても、ミルバは冷静だった。そしてそれは、覇王も同じである。放たれる気迫は、どちらも同様に落ち着いており、なおかつ今にも均衡の崩れそうなトランプのタワーのように張り詰めている。どちらかが動けば、闘いの始まりの合図とみなされる。それがわかっているために、両者は迂闊には動かなかった。
ミルバは急にふっと肩の力を抜くと、揶揄するように言った。
「随分兵たちの信頼が厚いことだ」
「ふん。皮肉を言ったところで、貴様にもう後はない。よくのこのことこんな場所へ現れたものだな。貴様が訪れる可能性がもっとも高いことを、気づかれないとでも思っていたのか?」
覇王の馬鹿にしたような口調に、ミルバは心外だとでも言うように鼻を鳴らした。
「以前兵に伝言を伝えさせただろう。時期さえ来れば、私は逃げも隠れもしないと」
「わざとか。……まあ、予想通りではあるがな」
「わかった上で来たのか」
ミルバは剣のある目つきで覇王を見上げた。
覇王はただ面白そうに口角を上げると、すらっと剣を引き抜く。
途端に、磁場を曲げるような強大な力が覇王の内側から膨れ上がり、周囲の空間を侵食した。舞子のかけた想像の力が発動したのだ。ハントを呼び出した時に執務室で見せた力より、遥かにまがまがしく、それだけで触れれば切れるような予感のするオーラに、ミルバは思わず飛びすさり、距離を開けた。
(クソ、化け物め……!)
ミルバは心の中で歯噛みした。
できるだけ時間を稼ぎ、覇王をこの場所へ留め、美香と耕太を舞子まで辿り着かせることが目的であったのに、覇王はそのこちらの意図さえ知った上でこの場所へ赴いたというのか。
(まずいな……。こいつは、一瞬で片をつける気だ)

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