幻想怪奇談 短編
青白く照らし出された公衆電話。
今となっては使う人も殆どいない。
過去の異物のように、ひっそりと神社の横に立っている様子は、うら淋しい存在を一層引き立てている。
僕はそれを憐れに思っていたし、孤高の佇まいに魅力を感じてもいた。
だからこうして僕は、ボックスの扉を開ける。
緑色の、昔ながらの電話。
なかで羽蟻がぐるぐると円を描き、蛾が突然の侵入者に驚きはためく。
あれば無用の長物と言われ災害時には、どこを探しても見つからないと文句を言われるこの箱。
僕はそっと、機体を撫でた
似ている。
会社ではいつも損な役回り
居れば給料泥棒、居なければいざと言うときには役立たずと罵倒され。
だからこうして、この閉じられた空間で僕はホッとする。
こいつは僕の相棒だから。
いつものように、優しく電話帳を取り出す。
これも遺物であるテレホンカードを差し込み、彼に命を与える。
電話帳に掲載されている名前に片っ端から電話をかけ…間違えました、すみませんと繰り返す。
30件も過ぎた頃
「くそったれ」
と受話器を叩きつけられた
やあ、今夜も見つけたよ。
君の喜びが、受話器を通して伝わるよ。
何回繰り返しても、慣れることなどない、突き上げるようなこの快楽。
見つけた。
僕ら二人よりも余程、無用な存在を。
僕は満面の笑顔で電話番号をメモして、彼にさようならと声をかけた。
今日も獲物を提供してくれて、ありがとう。
電話番号だけで、どれほど簡単に居場所が特定出来るか…それに気づいた瞬間、本当の意味で僕と相棒は繋がったんだ。
歩きながら考えていた
今度はどんな風に…
僕という存在を、電話の向こう側に伝えてやろうか。
結局、使いなれたナイフに落ち着くことがわかってる
思わず鼻唄を歌っていた
相棒が僕を支えてくれる限り、僕は大丈夫
大丈夫だよ。
なにも心配いらないよ…
また、来るから
完
感想
- 41569:全然おもしろくねー[2011-09-24]
- 41579:ほとんどにコメをしてくれている、同じ方ですよね?読んで下さってありがとうございました[2011-09-26]
- 41614:69、氏ね、うざい。なんなん、粘着?[2011-10-23]