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子供のセカイ。258

[319] アンヌ 2011-09-05投稿
耕太は少しほっとしたように調子を合わせる。美香はいつものように、きつい口調で返した。
「でも、だったらどうするの?あんたの力を使うには、あまりに勿体なすぎるわ。もう三回も使っちゃってるのに……」
光の子供特有の力である想像の力は、“子供のセカイ”では五回が使用限度である。六度目には意識を失うことは、美香も耕太も、身をもって経験済みだ。
最初の作戦から、美香と耕太の分身をばらまくこと、変身してコルニア城へ侵入すること。さらに閉じ込められているミルバを助けるために恐らく一度か二度、戦うために耕太がポケットに常に忍ばせている小枝を剣に変えるために一度、想像の力を使うことが予想されていた。風になって地下へ探りを入れることさえ、想定外の使用だったのだ。時間がなかったから仕方なかったとはいえ……。これからは、少しでも力を温存することの方が重要になってくる。
「私が調べるわ」
美香はきっぱりと言った。髪を後ろで一つに結い上げた美しい白の乙女が、横目に耕太を見据える。
「耕太は階段で待ってて。万が一怪しい部屋を見つけたら、すぐ戻ってくるから。できるだけ見つからないようにね」
耕太は不安そうな渋い顔をして美香を見上げた。
「けど、もし途中で本物の白の乙女に出くわしたら――?」
「うまくごまかすつもりだけど、もしばれたら、全力で逃げるわよ。悲鳴を上げるから、その時は助けに来てね」
美香は冗談めかして言うと、パッと身を翻し、長い廊下を走り出した。やわらかい絨毯のため、足音はほとんどしない。
耕太は成す術もなく、その後ろ姿を見送った。
しかし予想に反し、捜索はすぐに終わった。文字通り、そこには誰もいなかったのだ。美香は部屋同士のドアの間隔がやけに広いことにすぐに気づいた。そしてそれはドアを開けてみて、一つの部屋が豪華かつあまりにも広いスペースを取っているからだということにすぐに気づく。誰の部屋なのかはわからないが、恐らく幹部以上、白の乙女や夜羽部隊に当たるかもしれない者たちの部屋だろう。
「いなかったわ」
「……そっか。じゃあ、上行くか」
耕太が先頭に立ち、美香もその後に続く。今更ではあるが、部屋に鍵が取り付けられていなくてよかった、と心から思う。一つ一つの部屋に鍵が付いていたら、捜索は恐ろしく難航しただろう。
(……それにしても、何だか不気味ね)

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