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悪魔の天使 (33)

[304] 暁 沙那 2011-09-11投稿
「何で家に来たの?」

前とほとんど同じ体勢でレクスに聞く。

「ああ、仕事の話しに来たんだけど。」
「仕事?」

リアが振り返ろうとするとそれをレクスが止めた。

「ようやく準備が整ったから、その報告にね。」
「ふーん。」

レクスには秘密や嘘が多い。
仕事の他に来ている理由がある。
それをあえて隠し通す。

(私には言えないこと。経済的なことか…、もしくは……)

――婚姻系か。

自然と笑みが出た。

男を誘うような、艶のある笑み。

「ねえ、仕事って言ったけど本当?」

身体をゆっくりと預け、絡めた手を滑らす。

少し露になった肌にもう片方の手をやり、目線を手の方にやった。

「教えて欲しいな、あなたのこと。」

目線を滑らすようにゆっくりと上げた。

「あなたは主従関係を全うするの?私はいいけどあなたはいいの?」
「何?誘ってんの?」

声はいつもより抑えられている。
その代わりに耳元で囁くから、吐息がくすぐったい。

「駄目?誘っちゃ悪い?一応でもお互い関係持っちゃってるんだから、ちょっとくらい楽しみましょ?」
初めてだった。
まだ若い男を誘うのは。

本当に襲われたらどうしようかと不安になる。

今までの仕事のように中年相手なら逃げられる。
魔法だって使えばいい。
でも今回はそうはいかない。

リアは不安を閉じ込め、またあの笑みを作った。

それでもレクスは何もして来なかったので、リアは少し警戒を解いた。

油断した。

一瞬だった。

リアが気付いたときには完全に押し倒され、身動きがとれなくなっていた。

突然のことに軽く目を見開く。

「ねえ、レク…」

唇で言葉は塞がれた。

それが離れたかと思うと首筋に当たる。

不安が的中したのかとリアは怖くなった。

せめて手の自由だけても取り戻そうともがく。

「ねえ、ちょっと…!止めっ!」

だんだん下に下がって鎖骨の辺りまできたのを感じた。

「やっ…やだ!止めて!お願いだから!ねえっ!」

目に涙が溜まる。

「誘ったのはそっちだよ?」

いつもの声色ではなかった。
表情のない声。

「やあっ……!ごめん…ごめんなさい!!だから許して!!お願いだからっ!止めて!!」

そう叫ぶように頼むと、手が自由になった。

覆い被さるようにしてあった身体が離れていく。



ドアの閉まる音がやけに遠くに聞こえた。

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