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私にはあなたの痛みがわからない

[330] アイ 2011-09-23投稿
遠くで放たれた言葉の矢は

次々に誰かの胸に突き刺さる

例えば私の胸に

例えばあなたの胸に

矢傷を塞ぐ間もなく

新手の敵に備えて盾を構える

傷ついた心の穴はどうするの

ほら、血が流れてる

そんな身体でまだ戦うの?

激しい言葉の応酬で互いの身体を傷つけて

化膿した傷口はズキズキ、ズキズキ

そんなのは辛くて怖いから

できるだけ矢は持たないようにしていた

それなのにまたやってしまったの

気づかぬ内に私の左手は弓を手にし

ピンと弦を張って

新たな言葉の矢をつがえて

あなたの胸に突き刺していた

そよ風のようなさりげなさで

私にはあなたの痛みがわからない

きっとそれは、身体を共有しない限り絶対にわからない

でもね

これだけはわかるんだ

ふと見下ろした私の胸に一本の矢

見覚えのある矢羽

ああ、これは

私が放った矢だ

帰ってきたいつの間にか

あなたがつがえて放ったのか

勝手に戻ってきたのかは知らない

けれど確かに帰ってきた私の矢

同じではないかもしれない

私にあなたの痛みはわからないから

でも私も傷ついたよ

自分のせいで傷つきました

これで赦してくれとは言わないけれど

せめてあなたの傷口の手当をさせてくれませんか

また傷つけるかもしれないけど、その時少しは痛みが和らぐだろうから……

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