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子供水先案内人〜過去からの話〜

[356] Joe 2011-11-11投稿
今を遡る事五十年前。
朱鷺子は、亡き夫征一朗と結婚したばかりの、あどけなさを残した19歳であった。


どう?
「まだ痛む?」
心配そうに覗きこんだのは征一朗の母。
無言で首を振る息子を見て

とまたカーテンの向こへ引っ込んだ。



「・・、った・・。」
ベッドでうずくまる新妻の手を、征一朗は優しく包む。



と握り返されたその強さで、痛みがどれ程のものか知れた。
朱鷺子は妊娠4ヶ月。異変に気付いたのは3日前。


あら・・
「・・・、ねぇ、征一朗さん。征一朗さん、起きて下さい。なんだかお腹が変なんです。」


う、ん
「・・・え?何だい?」
征一朗は寝ぼけ眼を擦りながら、枕元の灯りを付けた。
まだはっきりとしない視力で妻を見ると、額に汗を浮かべいつも白い肌はその色を無くしている。


これは
「っ大変だ。」
征一朗は、


とはね起き、急ぎ産婆を呼びに行かせた。


どうだ?
「清さん。」

産婆は無言で首を振る。征一朗は朱鷺子を残して産婆と共に部屋を出た。


征さん
「ここ2・3日がやまやね。あのお腹の固さやったら、下手したら子供の方はもう・・・。」
産婆は一呼吸おいてから、


とにかく、
「何とか、大きい病院に運んで見てもらうのが一番やわ。」

この産婆は征一朗、そして朱鷺子をも取りあげた近所でも有名な産婆で、70を越えた今でも腰ひとつ曲がらず、多いときなどは1日に10人もとりあげる。
征一朗も朱鷺子もこの産婆には絶対的な信頼をよせていた。
その産婆の薦めもあって、すぐに朱鷺子を病院へ運んだ。

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