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ラッキーバンク 貸付

[483] 五十嵐 時 2011-12-09投稿
自分を天使だという
女子高生の姿をした女性は
『ラッキーバンク』という
システムの説明を始めた。

「ラッキーバンクってのはいわば
あなたの幸運の量を
調節する装置なので〜す」

二人の間に沈黙が生まれた。

「さては、信じてないな〜」

無反応な男を前に、女子高生は静かに目を閉じた。

「いいでしょう・・・
貴方に、幸運あれ・・・」

それだけ言い残すと
女子高生の体は
霧となって消えた。

「なんだ!今の!」

男はただの精神異常者だと思っていた女子高生が目の前で消えて驚きを隠し切れなかった。

次の瞬間
ピンポーン

呼び鈴に誘われて
男が玄関の扉を開いた。
扉の向こう側には
宅配業者がいた。

「お届けものです。
ここにサインお願いします」

男は宅配業者から
ボールペンを受け取ると
自分に届いたものを考えながら
スラスラと自分の名前を書き
荷物を受け取り
たった5.5畳の部屋の床に
両の手で抱えられるほどの段ボールを置いた。

「なんだろう」

男は早速
段ボールの中身を確認した。

「おお!肉じゃねぇか!
肉だ肉!」

男は数ヵ月前に
ビールの懸賞に応募していたことを思い出した。

「しかもA賞の松阪牛10人前だ!
食いきれねぇよ、おい」

男の顔には、いっぱいの笑顔が咲いていた。


翌日
男は気分は最高だった。
朝、競馬場への道中では
1万円を道端で拾い
競馬では、おもしろいように予想が当たる。
さらに予想が的中して
歓喜の声を上げている時
なかなか容姿のいい女性と目が合い、ウィンクまでされた。

「今日はいい1日だな〜」

クリスマスのネオンが輝く
競馬場から自宅への帰路につき
男はふと、昨日の女子高生を思い出した。

「・・・ふっ、まさかな」

一瞬掠めた自分の馬鹿な考えをすぐ振り払った時

「すみません!うちの息子を知りませんか!」

男の前に突如現れた必死な顔は
昨日自分にぶつかってきた子供の母親だった。

「知らねぇ〜よ。
自分のガキくらいしっかり見とけっての」

男は自らの気分の高揚に酔いしれながら
女性を軽くあしらった。

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