「知ってる」
「今日はもう帰るから。」
ずりぃ。
少しくらい言い訳させろよ。
君は知っている
俺が今から何を言うのか
どう共感を得ようとするのか
全部わかってる
君は
この息苦しい空間から出ていく
俺の思いだけを残して
ときどきゼロにしたくなる
出逢ったときの二人に
戻れたらって
今じゃ
お互いを知り尽くしてるから
葛藤も
衝突も堪えない
でも
どっちが悪いって
結局一人にされると
正直そんなのどうでもよくなって
すぐ会いたくなる
それでも謝りたくないから
とりあえず君が好きな
エクレアを買って家で待つ
それも
君は知ってる
笑って食べる君を見て
俺はホッとする
ある日
同じように
エクレアを買って家で待ってると
近くの病院から電話が入る
衝突事故?
重体?
信じたくない一心で病院へ向かう
手術中というランプが
やけに生々しくて
現実味を帯びていて
急に胸が苦しくなった
「今日は帰るから」
あのとき
引き留めていたら
ずっと一緒にいたら・・
二度ともう会えないなんてことないよな
そう考えると
手術中のランプが消えるのが
余計怖くなった
君を知り尽くしてるから
こんなに好きだから
だから
怖いんだ
それも
君はわかってるんだろな
君は
自分の命を懸けて
俺の思いを試そうとしてる
その気持ちに応えたい
手術室の外から
必死に君の名前を呼んだ
ケンカした後みたいに
すねたその顔で
戻ってきてほしくて
何度も呼んだ
だけど
彼女は戻ってこなかった
そこに
俺の知らない彼女が寝ていた
何を思っているのか
何を考えているのか
わからない
わからないんだ。
起こすとまた怒るから
起きたとき機嫌いいように
エクレアを買っておこう
でも
知ってるんだ
寝たふりなんかじゃないって
わかってる
哀しむ俺を見るのが
君が一番つらいってこと
いつか
いつになるかわからんけど
もし俺が
他の誰かを愛せたときに
君はいつものように
笑ってくれるかな
きっと
笑ってくれるよね
俺の知ってる君なら
俺を知ってる君なら
きっと・・。
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