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マナー違反

[787] 涼太 2012-06-16投稿
部活帰りの俺たちは、いつものように電車の中で騒いでいた。
一日がようやく終わり、ついついテンションが上がってしまうのだ。

そこへ、一人のおばさんがやって来た。40代後半くらいで小柄な女性だ。

「あなたたち少し静かにしなさいよ」

すると、注意されたのが燗に障ったのか、俺たちの中ではリーダー的存在の黒沼があからさまに不機嫌な声色で脅しをかけた。

「なんだよ、ババア」

しかし、彼女は顔色ひとつ変えなかった。

「周りの人みんな迷惑してるのよ」

その言葉で、俺たちは辺りを見回した。乗客たちが皆、冷ややかな視線を向けている。

さらに彼女は追い討ちをかけた。

「あなたたち高校生でしょう? あそこの小学生だって大人しくしてるのに、恥ずかしいと思わないの?」

彼女はドアの近くに立っている、黄色い帽子を被った小学生の男の子を指差した。
小学生と比べられては、流石に黒沼も黙って目を逸らすしかなかった。

「どうもすいませんでした」

取り敢えず、これ以上面倒なことになる前に俺は謝っておいた。

「わかればいいのよ」

彼女は満足したようで、満面の笑顔で頷いた。

高校や家について訊かれなくて助かった。
電話なんかされたらたまらない。

ホッと一息つく。

そして彼女は買い物袋が積まれた優先席に我が物顔で座ると、携帯電話を取り出し、通話を再開した。

「ごめんなさい、うるさいのがいて、注意してたのよ」

そう言うと、彼女は大声で笑いだした。

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