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シンクロニシティ

[784] 涼太 2012-07-31投稿
俺たち夫婦はとても仲が良く、何をするにも大抵一緒だった。近所からの評判も上々で、特に裕福というわけではないが、幸せな生活を送っていた。

だが、悲劇はある日突然に起こった。

俺は悪徳業者に騙されてしまった。大量の借金が情け容赦なく俺たちに降りかかってきた。貯金を全てはたいても、まだ3000万以上も残っていた。
その日から生活は一変した。毎日のように家に押し入る借金取り。軽蔑するような近所の眼差し。困窮な生活。親戚や友人に頭を下げて金を借りる毎日。

それでも、全く払いきれる気配はなかった。これ以上妻に迷惑をかけるわけにはいかない。そこで、俺はある方法を考え付いた。

自殺して、妻に保険金を残し、それで借金を返すというものだ。自分は死んでもいいから、妻だけは生きていて欲しいという願いだった。

妻には話さなかった。
優し過ぎる彼女の事だから、そんな事を言えば、代わりに私が死ぬと言い出す恐れがあった。


すでに生命保険には入っているし、自殺による免責期間も終了している。いつ死んでも大丈夫だった。

その日、妻が友達の家に行くと言っていた。また、金を借りに行くのだろうか。だがもう、そんな事をする必要もなくなる。

死にに行くというのに俺は妙に落ち着いていた。出掛ける妻を笑顔で見送ってから、俺も外へ出た。たまたま目に留まった高層ビルの屋上に上り、携帯電話で妻にメールを打った。最期に気持ちを伝えておきたかった。

『今までありがとう。俺のせいでこんな事になって、本当に申し訳ない。自分の事は自分でケリを着けるよ。俺はビルから飛び降りて、君は保険金を手にする。借金を返しても生活に困らないほどの金額の筈だから、安心してくれ。
死ぬ時は一緒だ、なんて言ってたけど、無理だったよ。本当にすまない』

送信された事を確認すると、俺は溜め息を吐いて、飛び降りた。

その直後だった。電話が掛かった。妻からだ。落下しながらも、何とか電話に出る。

「あなた何やってるのよ!」

妻の声は、大気が騒々しく耳をつんざいている中でも、ハッキリと聞こえた。

「すまない、でも」

間髪入れずに言われた妻の言葉に、俺は絶句した。

「私も今あなたと同じことをしちゃったのよ!」

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