勇者の説明書3
お母さん。『ユサ』は谷から落ちて、気がつくと知らない人の家のベッドにいました。
「………ここは一体誰の家でしょう……困りました。落ちてからの記憶が全くありません」
「あっ!やっと起きられましたね。赤ずきん様」
そこには、黒の衣でおおわれた長身の青年がちょこんと座っていました。
(……よかった。耳もシッポめない、どうやら同じ人間みたいですね)
「貴方が私を助けてくれたのですか?」
すると、青年はニコリと笑い。
「谷で狩りをしていた所、上から貴女様が降ってきたのですよ。赤ずきん様」
「あの……その『赤ずきん様』というのは……」
「………ああ!貴女様の姿がいかにも伝説に出てくる『赤ずきん様』にそっくりで……つい///」
確かに今の私の姿は、童話にでてくる。赤ずきんちゃんの姿に見えない事もないのですが………。
「…………伝説?童話ではなく?」
「はい!私の聞いた話では、幼くして狼をこてんぱんにした。それはそれは伝説の最強の少女なのです!」
………え?何か違う気が……。
本来、人国の童話にある赤ずきんちゃんは。
おばあさんに化けた狼が、お見舞いに来た赤ずきんちゃんを食べるが、最後に猟師さんに倒され。おばあさんと赤ずきんちゃんは助けだされる。
と、いうハッピーエンドであって。そんな、赤ずきんちゃん最強!
みたいなやつではないと思うのですが………………………人国では。
じゃあ、少し思考を逆転さして
もし、ここが獣国だとしたら!
「………あ…!」
確か
ずっと前にマー君のお祖父さんに聞いた事があります。
昔、私と同様。赤いマントをきた若き勇者見習いが獣国に最終試験の為に訪れた時、町で鉢合わせした狼の男達をミンチ状にして帰ってきた。という噂を!
多分この黒ずくめの男の方はどうやら、本来の赤ずきんちゃんをその勇者見習いの話と勘違いしているのですね。
「どうしましたか?赤ずきん様」
「…………プッ」おっと、人の間違いを笑ってはいけませんね。
私とした事がつい。
…でも、もしここが獣国だとしたら少々外が静か過ぎます。
一度、ここが本当に獣国か確認しましょう。
「あの!青年さん!」
「なんでしょう?」
青年はニコリと微笑む。
「ここは獣国ですか?やけに静かですが」
「はい、獣国ですよ」と青年は近くの窓を開ける。
「でも、獣国といっても国の外れの所にある。狼の村ですけど」
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