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魘戯れ

[418] 比呂 2012-08-17投稿
苦しみの中にいた

誰も助けてくれようともせずHelp me!Help me!と連呼するのだった

気づくと僕は包丁を手にしていた

刃先を腹に当てんとしていた

その時だった

ただいま、と玄関の方で沙希の声がした

僕は包丁を元あった場所に戻そうとした

しかし、僕は次に可笑しな行動をとるのだった

彼女はいつもと何ら変わらない感じで大きな荷物を抱えてキッチンに向かっていく

僕はその前に急いで走っていき、キッチンと繋がっているサンルームのソファーの下に包丁を隠したのだった


ただいま

あぁ、おかえり


トゥリマカシ

僕は悟られんがためにどっかで聞いたことのある外国語を口にした

すると、彼女はWhat?

と英語で答えた

あぁ、インドネシア語だよ

咄嗟にそれがインドネシア語であることを思い出した


その後のことは記憶になかったが翌朝はいつもと変わらず隣で彼女が寝ていた


僕は布団から這い出て昨日はどうも頭がショートしてイカれていたのだなと思った

そして、キッチンの冷蔵庫から麦茶を取り出してグラスに注いだ

すると、また昨日の記憶が鮮明に甦るのであった

あれは、俄武士の物真似常三郎だな

なんて冗談を言い聞かせることでまたいつもの自分を巻き返そうとした

しかし、頭は誰かにコントロールされているようでいうことをきかない

次第に意識が遠退いていく

何かの呪文が聞こえる
僕は必死にそれを振り払おうとする

気づくと、今度は激しく喚いていた

その声で目が覚めたのか、いつの間にか沙希が僕の背中を擦ってしきりに

大丈夫

大丈夫

あなたにはあたしがついているから

というのであった

彼女の声を聞き、僕はまた平常という名の城に戻った

今、あの時のことを思い出してもしあの場に彼女が居なかったらと考えるとゾクッとする

そして、今も僕は彼女と共にいる…

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