餓鬼 6
喜美の疑問を察知した様に
「主人、笑ってないでしょう?これは余命を宣告された後の写真なの。それまで、仕事一筋で生きてきたから、旅行なんてあまりした事なかった。
だから、生きてる間に二人の想い出を作ろうって…私が笑顔になれば成る程、あの人は私が不憫で仕方ないって、寂しい思いをさせてすまないって…。」
由梨絵はアルバムを引き寄せて閉じた。
そうだったんだ…喜美は楽しくなさそう、なんて思った自分を恥じた。
お互いに、どんなに辛かっただろう。
私は由梨絵の様に気丈に振る舞えない、きっと笑顔なんて作れない。
「由梨絵さんは強いのね…。」
喜美はポツリと言った。
少しの沈黙の後、由梨絵は又、笑顔を見せて、
「美味しそうなケーキね!頂くわ。」
そう言うと、ケーキを口にして「美味しい!!」と、喜美を見た。
どんな時でも、由梨絵は取り乱したりしない冷静な女性なんだと喜美は思った。
「由梨絵さんって本当に大人よね…私なんかと大違い。どうしたら由梨絵さんみたいな女性になれるのかしら?」
喜美は由梨絵をまじまじと見た。
「そんな事無いわよ。私だって人間なんだから怒る事も有るわ。只、滅多に怒らないだけ。その分、私を怒らせたら怖いわよ…。」
由梨絵は笑いながら喜美に言った。
「私、我が儘だから、怒らせてしまうかも?でも気を付けま〜す!」
喜美も笑顔になった。
「そうよ、怒らせないで」
呟く様に言った言葉は喜美には聴こえていなかった。
「由梨絵さんはどんな時に怒るの?」
喜美が聞くと、
「さぁ?どんな時かしら?裏切ったりされると駄目かな…でも、それは皆同じでしょ?」
喜美は頷いた。
「そうよね〜。もし、尚輝さんが浮気したら…考えただけでムカついちゃう!」
喜美がしかめっ面をして見せた。
「起こってもいない事で、怒られたらご主人も堪らないわね!」
由梨絵は声を出して笑った。
そして静かに言った。
「本当に浮気をされたら、怒りよりも悲しいわ、そして苦しいの。時間が過ぎて行くと怒りや憎しみに変わる。そうなると怖いわね…。」
もしかしたら本当に、由梨絵は夫に裏切られた事が有るのかも…
「嫌だ!由梨絵さん、そんな話、止めましょ?」
自分から話を持ち出した事を忘れて喜美は言った。
「そうね。嫌な話しだわ…。」
由梨絵は遠くを見て言った。
「主人、笑ってないでしょう?これは余命を宣告された後の写真なの。それまで、仕事一筋で生きてきたから、旅行なんてあまりした事なかった。
だから、生きてる間に二人の想い出を作ろうって…私が笑顔になれば成る程、あの人は私が不憫で仕方ないって、寂しい思いをさせてすまないって…。」
由梨絵はアルバムを引き寄せて閉じた。
そうだったんだ…喜美は楽しくなさそう、なんて思った自分を恥じた。
お互いに、どんなに辛かっただろう。
私は由梨絵の様に気丈に振る舞えない、きっと笑顔なんて作れない。
「由梨絵さんは強いのね…。」
喜美はポツリと言った。
少しの沈黙の後、由梨絵は又、笑顔を見せて、
「美味しそうなケーキね!頂くわ。」
そう言うと、ケーキを口にして「美味しい!!」と、喜美を見た。
どんな時でも、由梨絵は取り乱したりしない冷静な女性なんだと喜美は思った。
「由梨絵さんって本当に大人よね…私なんかと大違い。どうしたら由梨絵さんみたいな女性になれるのかしら?」
喜美は由梨絵をまじまじと見た。
「そんな事無いわよ。私だって人間なんだから怒る事も有るわ。只、滅多に怒らないだけ。その分、私を怒らせたら怖いわよ…。」
由梨絵は笑いながら喜美に言った。
「私、我が儘だから、怒らせてしまうかも?でも気を付けま〜す!」
喜美も笑顔になった。
「そうよ、怒らせないで」
呟く様に言った言葉は喜美には聴こえていなかった。
「由梨絵さんはどんな時に怒るの?」
喜美が聞くと、
「さぁ?どんな時かしら?裏切ったりされると駄目かな…でも、それは皆同じでしょ?」
喜美は頷いた。
「そうよね〜。もし、尚輝さんが浮気したら…考えただけでムカついちゃう!」
喜美がしかめっ面をして見せた。
「起こってもいない事で、怒られたらご主人も堪らないわね!」
由梨絵は声を出して笑った。
そして静かに言った。
「本当に浮気をされたら、怒りよりも悲しいわ、そして苦しいの。時間が過ぎて行くと怒りや憎しみに変わる。そうなると怖いわね…。」
もしかしたら本当に、由梨絵は夫に裏切られた事が有るのかも…
「嫌だ!由梨絵さん、そんな話、止めましょ?」
自分から話を持ち出した事を忘れて喜美は言った。
「そうね。嫌な話しだわ…。」
由梨絵は遠くを見て言った。
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