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日々が香ばしい4

[547] ともも 2012-12-05投稿
謎子さんは暫くして泣き止んだ。
嗚咽が聞こえなくなると顔面を押し付けるように涙と鼻水を俺のよれたシャツで拭き(ちょっと待て)何でもないように立ち上がる。つられて俺も立ち上がる。立って観た感じこの謎子さん俺とたいして年は変わらないくらいだろう。二人して顔を合わせる。そして沈黙。なぜだ。

「あの、怪我ないかな?」取り敢えず聞いてみた。
「ええ、お陰様で。いいクッションになってくれました。」
あれ?感謝されてる割りにはなんか言葉の端々に棘をかんじるぞ。
「ええと、うん。それは良かった。」
「よくありません!」
いきなり怒鳴られた。無難に選択した言葉のつもりだったが。
「いいですか。そもそも貴方がこんな坂道でぼっと立ってるのが悪いのです。」俺のせいにされてないか。「私の健脚ならばあの程度のスピードすぐに殺せるはずだったのです。」
「いやあの…」
被害者は俺なんだが。
「それに貴方のような男性の若者が私のようなか弱い乙女一人受け止められなくてどうするのです。」
いやいきなりだったし。
「全く最近の若者は…」
「ちょっと待った!」
最早埒があかない。
「兎に角落ち着こう。人も見てるし。」
言ったとたんに謎子さんはキョロキョロと回りを見渡し、どこぞやの奥様方が俺たちを見て内緒話してるのに気がついた。赤くなる謎子さん。素直でよろしい。
「ほら、これを追って走ってたんだろ?」

そう言って足元に転がるオレンジを一つ手に取る。
「まずは拾おう。」
「……そうですね。」
しぶしぶといった感じで謎子さんはオレンジを拾いはじめた。


無数に散らばったオレンジを拾うのにそう時間はかからなかった。
両手に抱えたオレンジとともに謎子さんのもとへと戻る。と同じ様に両手にオレンジを抱えて謎子さんは立ち尽くしていた。
「ねぇ、これ入れる袋は?」
言った瞬間「はあ」とため息をつかれた。
「なぜ私がこれを落としてしまったと思います?」

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