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日々が香ばしい9

[558] ともも 2013-01-23投稿
「荷物持ちありがとうございました。とりあえずそれはこちらに」
「んあ?はいはい。」

間抜けな返事をしながら彼女に言われた通りに両腕一杯のオレンジをテーブルの上に置く。

「お茶を淹れますのでそこに座って待っていて下さい。」

言われるがままに肩に提げていたバッグを床に降ろし、手近な椅子に座った。
物が古いのか身じろきする度にギシギシと悲鳴をあげる。
座ってから気がついた。なぜ自分は見ず知らずの人の家でお茶をご馳走になろうとしているのか。

「あのー」
「はい、なんですか?」
こちらを振り向きもせずにお茶の準備に勤しむ彼女。うん。臆せずはっきり言おう。
「ここまで来てなんだけど」
「はい」
「その、このままお茶をご馳走されるのは君に悪い気がするんだけど。」
「なぜですか?」
答えながらも彼女はヤカンに水を必要分だけ汲み火にかける。
「だって、俺はちょっと荷物を持っただけだし。始めに君と激突したのだって事故みたいなもので怪我もなかったし」
「ふむふむ」
言いながらもお茶の準備に余念がない。ちゃんと俺の話を聞いてるのか?この娘。
「で、それだけですか?」「ん?」
彼女の言い方はそれがどうしたとでも言うように淡々としていた。顔が見えないので今、彼女がどんな表情でどんな心境なのか判りかねる。
「このあと急ぎの用事があったりするんですか?」
「いんや、特にないけど」「それとも私からお茶をご馳走になるのがすごく嫌とか?」
戸棚から二人分のティーカップとポットを取り出し、尋ねる。
「滅相もございません」
美人の娘に(少し変なひとでも)お茶に誘われて忌々しく思う高校生はいない。いるなら出てこい殴ってやる。
「ならいいじゃないですか」
今まで淡々と作業していた彼女が髪を揺らしながら振り返った。正面から俺に挑むようにして顔を見合わせる。
「貴方は荷物持ちとして私を手伝った」
「うん」
確認するように彼女は言葉を紡ぐ。

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